ピックガード・フィンガーランプ【楽器製作所RMI】

どうも、るいなです。

最近は暖かくなり、工房に遊びに来てくださいくれる方が増えて嬉しい日々を過ごしています。

今回は僕が得意とする”専用デザイン”のエレキベース用アタッチメントパーツを2つ紹介します。

とりあえず完成図をどうぞ。

このワーウィック製のとんでもない7弦ベース、よく見ると真ん中に黄色っぽい塊、その上に透明の何かが付いています。

これがアタッチメントパーツです。単体で見てみましょう。

ピックガード

こちらが”ピックガード”と呼ばれているパーツです。

まるで水溜まり。

ピックガードとは書きましたが、スラップ奏法の際に指が入り込み過ぎないようにするための“スラップスロープ”の役割も兼ね備えたアイテム。

今回はスラップ奏法のアシスト・ボディの保護・指の置き場作り、この3点を全て叶える為に専用設計で製作しました。

楽器本体に穴空けはしていません。

今回は元の状態に戻すことの出来ない加工は行わない、という方針でした。

料金は22,000円(税込)から承ります※デザインや素材により金額が変動します。

フィンガーランプ

続いてこちらの黄色い塊がフィンガーランプ。

主に、指弾きでの演奏性アップのために装着するアイテム。

こちらも指が深く入らないように制限され、速弾きなどのテクニカルな演奏をされる方が装着していますね。有名な方だとアドリアン・フェロー氏など。

今回はデザイン性を重視し、”ボコーテ”という木材で製作。

狙い通り、奇怪な色合いになりました。褒めてる。

こちらも穴空けはしていません。

ピックアップ(黒い塊の方)の側面に両面テープを貼り、固定しています。

※両面テープはこちらを使用しました。自作される方は是非。

フィンガーランプの料金は11,000円【税込)から承ります。※仕様により金額が変動します。

スウィープ奏法もやりやすいらしい。変態め。

【まとめ】

自作して楽しむもよし、オーダーするも良し。

アタッチメントパーツ1つで上達が急に速くなったりします。

楽器製作所RMIは『演奏性・デザイン性』共に理想の楽器に近づけるお手伝いをします。

楽器との素敵な生活をお送りくださいませ。

おわり。

【リペア】ネック折れの最も簡単な修理方法【楽器製作所RMI】

どうも。るいなと申します。

新宿駅から2時間、山梨県の端っこで楽器をつくったり修理するドライブ好きな者です。

今回は『ネック折れ』というリペアの中でもトップクラスに派手な修理をしたことを思い出したのでまとめてみました。

「倒しちゃって真っ二つに…これって直る?」との事で持ち込まれたYAMAHAのアコースティックギター。

予算は4万円。早速作業に取り掛かる。

ご覧の通り派手に、そして綺麗に折れている。

ちなみに今回は大掛かりな修理ではなく、“とりあえず弾けるようにする”という必要最低限を目標に設定。

もちろん価格も抑えて仕上げることができる。

正直、このように綺麗に割れている方が治しやすかったりする。

というのも時間が経って変形、または割れた破片を紛失してしまうとその溝を埋める必要がある。

そうなると費用も高額で納期もかなり掛かってしまう。折れたらすぐにリペアしてもらうこと!

破片を取り除いたあと、木材の繊維を元の位置に戻す。

そして断面にタイトボンドを塗り、クランプで接着。

簡易修理の為、このまま継ぎ目だけを綺麗に研磨し、最後に塗装をする。

実はネック折れ修理と言っても様々なリペア方法がある。予算があれば補強材を入れたリペアをオススメする。

そして完成。もっと写真撮っておけばよかった…

肝心の表も継ぎ目がわからないレベルだと思う。ロゴも綺麗に残すことができた。自画自賛しかしてない。

形あるものいつかは壊れてしまう。新品を買った方が安いかもしれない。

ただ、気に入っている物を大切にして何度も修理して使っていく事はとてもかっこいい事だと思っている。

車でも時計でも楽器でも、“モノ”に歴史を与えていくのはとても楽しい。

この記事を参考に、ご自身の楽器に合わせた“最適なリペア”をご検討下さい。お気に入りの楽器を長く愛用していただければ嬉しいです。

当工房でも各種SNSやメール、お問い合わせ欄にてリペアを受け付けております。選択肢のひとつとしてお考えください。

おわり。

『楽器×自動車』“クルマ”に魅せられたエレキギターを徹底解説『#13 – Cetus』【楽器製作所RMI】

お久しぶりです。

はじめましての方はようこそお越しくださいました。

るいな、と申します。

“楽器製作所RMI”にて、ギターやベースをつくったり修理したりしている者です。

実は以前使っていたブログのページで画像の枚数制限になってしまいまして…今回はのびのび語れるホームページを設けた次第です。

さて、本題は新作の徹底解説。

コンセプトはご覧の通り”クルマ”。

グレーをシンボルカラーとするイタリアの自動車メーカー『ABARTH(アバルト)』より多大なる影響を受け、製作を開始した。

ちなみにカラーネームは敬意を込めて【アバルトグリジオ】とする。

実のところ、このクルマは私が購入した初めてのMy car。1年ほど乗り回しているが全く飽きない。運転が楽しみで起床するほどである。

乗り心地だけでなく、ブランドの歴史的な背景を含め大好きになってしまった。車に関心を持たせてくれたきっかけ。このように語り出すと止まらないので続きは別枠にしよう。

要するに…

工業製品・芸術作品、両方を堪能出来るサイコーギターが完成したよ!ということ。

驚くべきはその重量。なんと2.5kg。

ヘッドレスギターと変わらない軽さを実現。偶然。

ちなみに、フェンダーのストラトキャスターなどは3.2kg~4kg。実際に持ってみると圧倒的に軽いことがわかる。

ソリッド(中空構造ではない)ギターでは異例の軽さではないだろうか。

軽いことで得られるメリットとして、まず手に取りたくなる。次に長時間の演奏でも身体への負担が少ない。最後に振り回して遊べる。道端の木の棒を拾って下校した人はわかると思う。

“軽さ”に貢献するのは様々な要因があるが、今回はご覧の通り背面の削り落とした部分が大きく影響している。過去作と比較してもトップレベルの減量に成功。ライザップか?

ボディの材質は3メートルの板から削り出した最高にエキサイティングなアルダー。継ぎ目のないワンピースピース材にて使用した。

2tトラックで届いた時、保管出来ないのに何で買っちゃったかなぁ、って思った。なんで買ったのほんとに

でも見て、ほら。このボディ中心部。

ここにネックをジョイントして下さい!と言わんばかりの木目。強度的にもルックス的な観点からも最良。ベストな選択だった。

ネックはメイプル。

至って普通の木。そのへんで売ってる。

でもかっこいいでしょ?実物見たらただのメイプルでも宝石のように見えると思う。絶対欲しくなっちゃう。そのくらい気合入れて加工した。

気になるネックの形状は左右非対称。いつも通り6弦側が薄く、1弦側が厚い。

実際、市販のギターより厚めだがこの特殊なシェイプの恩恵もあり普通に握りることができる。

内部には2本のカーボンと1本のトラスロッド。

中心のトラスロッドは調整箇所がトンネルのように通してある。これ自体に目立つメリットは無いが見た目が美しいので試してみた。

カーボンロッドも隙間なく詰め込んである。見えなくなるところではあるが美学を感じる箇所のひとつ。

指板はエボニー。黒いしな。

サイドインレイは”クソデカ”サイズ。しかも光る。緑色に光る。

やっぱりサイドインレイは大きければ大きいほど見やすいんよなあ…

何事にも「なんかいいな」って思うあの感覚あるじゃん?それを大切にした結果がこれ。

フレットは細く背の高いステンレス。

「ハイフレットのスウィープやりやすっ!」

とのご意見いただきました。ありがとうございます。まさか!これがお客様の声ってやつか!!

という事で、弾き心地の要因としてフレット自体の太さはとても重要だと思う。

ストラップピンはジムダンロップ製の埋め込み式。

楽器のシルエットを崩さずに搭載できる最高なアイテム。

そして気になるこの茶色いライン。

これはウォルナット。

しかし別角度から見てほしい。

こちらは白いライン。

材質はアッシュ。

そう。今回はトップ材に2種類のマテリアルを使用している。低音弦側にウォルナット、高音弦側にアッシュ。

それをセンターで張り合わせてある。

全てはこの質感を楽しむ為。

至近距離で見るとこのように、木目の凹凸が浮き出てくる。

ウォルナットとアッシュ、左右でそれぞれ違った質感を体感できるのだ。

これは触れなければ味わえない。

カッタウェイは大胆に削った。

裏面は常に手を添えて居たくなる柔らかい造形。

表面は逆に”工業製品”を感じさせるブラックの艶消しピックガード、そしてシルバーの六角ビス。

もちろんピックガード自体の固定もボディ側にインサートナットを入れて締結している。この金色の歯車みたいなやつね。

ご覧の通り表と裏で目指しているベクトルが全く違う。そう、ギャップ萌えってこと。

ちなみに、ピックアップの取り付けネジ部分にもインサートナットを組み込んでいる。高価なものに加工するのは気が引けたが「構わん続けろ」の精神が大切。なんのアニメのセリフだっけこれ…エヴァだっけ…

正面から見れば工業製品。

背面から見れば生物。

側面と背面の境も無段階。

このように見る角度により様々な表情を浮かべる為、見ていて飽きない。常に新しい大好きポイントが現れる。

ヘッドはご覧の通りいつもの。

この形状は今まで見た楽器の中でも最も好き。

円柱のつまみが非常に似合う。

シルバー&ブラックという混合は初めての組み合わせだが、どこか”腕時計”のような清潔なおしゃれを感じる。

スーツ姿でも弾ける、ビジネスマンにも似合う楽器でありたい。

ペグ本体もインサートナットに六角ビス締結。これをしないと気が済まない。

ヘッド裏の茶色いアルダー材は模様が出ててカッコよかったから貼り付けておいた。勝手にエキゾチックアルダーと呼んでいる。

勝手に”アグレッシヴアルダー”って呼びたい気持ちはある。

形状はどの角度から見ても楽しめる。製作者本人ですら見るたびに発見がある。

1番の見どころはこれ。

わかるかなぁ。

グレーのプレートが貼ってあるように見えるの。

実際はネック材を削って造形しているだけなのだが…

「変なプレート貼ってるし草」と勘違いしてくれたのなら冥利に尽きる。

側面までグレーのプレートラインは続く。

まるでコンクリートの板が存在するかのような振る舞い。

削って塗っただけなのにプレート貼ったように見えるの最高。

「あれ、実際にプレートを貼った方が楽だったな」と気がついたのは完成してからのこと。時すでに遅し。

ちなみに塗装前はこんな感じ。

ね、結構キレイに削り出せてるでしょ?

これはいわゆる”スキャロップドナット”というやつだろうな。素材は黒水牛のツノ。”黒雲母”という石に似た材質で、積層構造の紙のようにペリペリと剥がれる。

その為、こうした複雑な造形には向かない。

だからこそ加工してやりたくなる。人のやりたがらない事こそ、やってみると面白い。

構造としては弦同士の間が抉られ、その底面が指板の高さと一致している。これがしたかった。指板が弦を支えてるみたいでかわいい。とても健気。

個人的にはこれがナットの理想型のひとつ。

“弦を支持する”

この役割のみに徹するべき。

ブリッジは弦ゲージ09-46に合わせて”弦間ピッチ”を統一している。

要するに、太い弦も細い弦も同じ間隔を置いて配置されている、ということだ。

弦たちもソーシャルディスタンスを守ってるって事だね。えらいえらい。

最後にこの理解出来ない形状を自慢して終わろうと思う。

「無駄に洗練された無駄のない無駄な形状」

とのコメントいただきました。最高の褒め言葉です、ありがとうございます。

演奏者本人のモチベーションが上がる事が最優先。

予算を気にせず好き放題つくることができた。

とにかくお気に入りの作品。

この感動を是非とも体感してほしい。

見て、触って、聴いて、交流して楽しめる。

今回も好き放題語らせていただきましたが、ここまで辿り着けた方とは絶対に仲良くなれます。なりたいです。

本当に長いことお付き合いありがとうございます。

どうか今後ともよろしくお願いします。

【謝辞】

962wood works

裏フタへのロゴ刻印をお願いしました。

何度もめんどくさいオーダーに親身に応えてくれる大尊敬先輩。ギターのつくり方から刃物の手入れの仕方までお世話になっています。

真冬にも関わらず工房に泊まりに来てくれた際、上着を貸してくれて助かりました。早朝はコンビニまで散歩したり、一緒にいると全てが楽しいです。

そして製作されている楽器も飛び抜けたセンスのデザイン。真似したくても到底出来ません。今後も繁栄を願っています。

次回も宜しくお願いします。

【Spec】

Model : Cetus

string: 6

Scale: 25.5

1Vo. 6way switch

Body : Alder

Neck : Maple

Carbon Rod ×2

Inlay

Luminlay Green dot inlay

Head

Top plate: Ebony

Fret : Stainless

Nut : Black buffalo horn(Scalloped)

Fingerboard : Ebony

Hardware color : Black & Silver

Bridge : ABM

Tuners : Hipshot

Pickup : Tom Anderson

Neck : SA1R

Middle : SA1

Bridge : H2+