『黒水牛の角ナット』のメリットとデメリット【楽器製作所RMI】

どうも。るいなです。

今回は真面目に書くシリーズです。

ナット交換の際、素材で悩まれる方は多いです。

私のおすすめはスタンダードな牛骨、もしくは“黒水牛の角”です。

牛骨については他の方がたくさん情報を残しているので、今回は『黒水牛の角』についてお話しします。

黒水牛の角のメリット

繊維質な模様が特徴。

天然の素材で黒いナットが欲しい方にぴったり。

エボニー指板の楽器によく似合います。

完成後の質感はナット材として一般的な素材である牛骨とほぼ同じ。

製作中はパリパリと剥がれるので、製造する身としては少し気をつかう必要があります。

黒水牛の角のデメリット

ギターリペア ナット交換 黒水牛の角

今のところ、欠点は感じていません。

生産するコストも、今のところは牛骨とほとんど変わりません。

輸入が難しくなった場合は高くなる可能性もあります。

まとめ

メタル用ボコーテ指板6弦ギター

市販の楽器には使われることの少ない『黒水牛の角』。

天然の素材で、楽器を落ち着いた雰囲気に仕上げるなら『黒水牛の角ナット』がおすすめです。

以上、ナット交換の素材選びの参考にしてください。

おまけ

“楽器製作所RMI”ではナット交換の前に、ナット溝の掃除を行います。

ナットの置く位置に凸凹があると、取り付け後にトラブルが起きやすくなるからです。

既製品をそのまま取り付けることはございません。

それぞれの楽器に合わせて“ナット”を製作しています。

[ナットの制作と交換 : ¥9,790 ~(税込)]

フィンガーレスト・フィンガーステップ【楽器製作所RMI】

フィンガーレストフィンガーステップピックガード

「ぷるるんぷるるんぷるるんぷるるんしずくちゃん!きれいな森守るっためっ♪」

気がついたらこれを口ずさんでいた。

懐かしいね、『ぷるるんっ!しずくちゃん』。

はい。真面目にやります。

フィンガーレストフィンガーステップピックガード

え〜、これは水ではありません。

アクリルです。

フィンガーレストフィンガーステップピックガード

ピックガード、フィンガーステップ、フィンガーレスト。

3つの機能を持たせたため呼び方に困るのだけれど、一言で説明するならベースを弾きやすくするアタッチメント。

フィンガーレストフィンガーステップピックガード

今回はワーウィックというメーカーのエレキベースに取り付けた。中でもこちらは代表的なモデル、コルベット。

フィンガーレストフィンガーステップピックガード

「んにしても!!!!ここがかわいい!!!」

水をこぼしちゃったようなデザインにしてみた。

いかがだろうk僕は最高に気に入っている!!!

フィンガーレストフィンガーステップピックガード

これは指を置くための凹み。フィンガーレストの役割を担当している。

フロントピックアップよりネック側のポジションで指弾きすることが可能になったってわけ。

フィンガーレストフィンガーステップピックガード

そして、スラップ奏法の際に指の入り込み具合を調整するため、5mmの厚さを採用。

ここはフィンガーステップの役割を担当。

また、スラップ奏法をしているとボディに爪が当たり、塗装が剥げる。

これを防ぐ効果もあるため、ピックガードとしての役割も兼ね備えている。

フィンガーレストフィンガーステップピックガード

オーナーのこだわりで、1弦側はなるべく面積を多く取るようにデザイン。

「それ以外はお任せで!かっこよくやってください!」

フィンガーレストフィンガーステップピックガード

とのことで、5弦側は自由にやらせてもらった。

「自由人ですね。」

高校1年生の担任の先生に褒められちゃった時のことを思い出したね!たぶん褒められてないけどね!

フィンガーレストフィンガーステップピックガード

アメーバみたいで最高。

固定方法は圧力のみ。

ボディに穴を空けずに装備しているため、着脱もかんたん。赤ちゃんでもできる。

以上、指を置くためのフィンガーレスト。スラップ奏法の際に指の入り込み具合を調整するフィンガーステップ。そしてボディの保護も兼ね備えたピックガードでした。

金額は38,500円(税込)で製作しました。

参考になれば幸いです。

フィンガーレストフィンガーステップピックガード

おわり。

2023/4/17 オーナー様より演奏動画をいただきました。ありがとうございます。

指板にポジションマークを追加する【楽器製作所RMI】

ポジションマーク入れ
インレイの追加:9,955円(税込)

というわけで、これはポジションマークを種から育てて収穫するまでの記録。

これからポジションマークを育てようとしている方は必見です。

それでは早速参りましょ。

まずはタネを植える場所を探す。

ポジションマークあと入れ

「おっ!こんなところに良いウエンジ指板が!」

この土地にタネを植えることを決意。

ポジションマークあと入れ

マスキングテープで位置を決め、マジックペンで印を付ける。

ゴールドのフレットがかっこいい。

ポジションマーク2mm

今回は円柱状の白いタネを用意した。

サイズはご覧の通り1.96mm。

ポジションマーク2mm

2.0mmのドリルビットを用意し、穴を空けていく。

ポジションマーク穴あけ

木…間違えた、土を掘り起こす。

いや、マジで土に見えてきたな…

ポジションマーク入れ

植えた。

すでにかなり成長している点については少々気になるが…

ポジションマーク入れ

しかしかわいい。

水をあげたら成長した!と言わんばかりのかわいさである。

ポジションマーク入れ

さて、収穫の時期が来ました。

先端がこんな形の変わった道具を使います。

ポジションマーク入れ

無事収穫。

タネを植えた場所に、白い痕跡が残っていれば完璧。

また大きく成長してくれるよう期待を込めて。

※これはベースにポジションマークを入れた記事です。
指板に水やりをしてもポジションマークは生えてきません。
また、ポジションマークは成長することもありません。
絶対に参考にしないでください。

おわり。

【リペア】ストラップピンが抜け落ちてしまったので修理する【楽器製作所RMI】

ストラップピンってこれのことです。

ロック式ストラップピン
RMI #13 – Cetus

ギターやベースを立って演奏するときに使う、ストラップを引っ掛けるアイテム。

ちなみに、座って演奏するときも肩から掛けておくと楽器をホールドできるので安定する。試してほしい。

今回はそんなストラップピンが根本から外れてしまった、とのこと。

ドライバーも使わずに外れてしまったので、覗き込んでみた。

ストラップピン穴

「めちゃでか穴空いてるじゃん…わろた」

しばらく見ない間にピアスを拡張した友人に再会したような気分になった。

笑ってる場合ではないので早速修理していく。

ストラップピン穴埋め

穴の形に合わせて木片を削り出す。

ボンドを塗り、突き刺す。

ストラップピン穴埋め

「おら」

硬化時間は長いが、粘性の高い接着剤を使用した。

このまま24時間放置。

ストラップピン穴埋め

埋めたら平面を出す。

ラッカー塗装というデリケートな方法で塗装されているため、ストラップピンの周辺は塗装が剥げている。

これ以上は傷口を広げない、という硬い意志で慎重に作業を進める。

ストラップピンの太さは以下の通り、3.03mmとのこと。

ストラップピン穴空け直し3mm

なので、ネジ山が噛むように小さめの2.5mmの穴を空ける。

ストラップピン穴空け直し

ストラップピンを取り付けるんだけど、そのままつけたら塗装がまた剥げる。

それを避けるため、フェルト生地の緩衝材を挟む※ピンクの矢印

ストラップピン穴空け直し緩衝材

効果はどれだけあるかわからないけど、やらないよりはやった方がいい。それは確実。

ストラップピン穴空け直し

目立たないけど、こちらにもフェルト生地の緩衝材を装着。

いいね、我ながらいいねと思ってしまったね。

エレキギターボリュームポット交換リペア

ついでに頼まれていた、ボリュームポットも交換。

念の為、隣のポットにもアースも付けた※黒い線

フェンダーUSAジャガーリペア

完成〜!

フェンダーUSAのジャガー。剥げたラッカー塗装が最高に渋い楽器でした!

おわり。

ストラップピンの穴あけ直し 3,850円(税込)※1ヶ所

『ナット』の役割は3つある【楽器製作所RMI】

“ナット”について考えていたら寝るタイミングを逃しました。るいなです。

さて!ナットと聞いて、いま何色を思い浮かべました!?

ギターヘッド
画像左側 : 象牙のナット

白い牛骨のあなた。金色のブラスはオタク。

黒を思い浮かべた僕は『黒水牛の角』。

ギター黒水牛の角ナット交換

そしてこれが今日作った『黒水牛の角』を素材に使用したナット。6弦ギター用です。

そもそもナットとは。

ナットとは、エレキギター・エレキベース、マンドリンなどの様々な弦楽器に使われる部品の名前です。

素材は牛骨やプラスチック、カーボンやブラスが使われることが多い。

弦を支えるための適度な硬さ。そして弦を滑らせるための摩擦抵抗の低さ。

この2つがある程度揃えば、なんでもナットとして使えます。

またナットは弦に直接触れているため、開放弦の音を決める大きな要素。

ナットの役割について。

ナットには、3つの役割がある。

① 弦を支えること。

ギタースキャロップド黒水牛の角ナット
RMI #13 – Cetus [素材 : 黒水牛の角]

個人的には、弦を支えるという仕事さえ果たせばそれ以外は何をしても許されると考えている。

そして、必要最低限の機能を持たせたナットがこちら。

ギタースキャロップドブラスナット

いわゆる“スキャロップドナット”と呼ばれている。純正で採用しているメーカーとしては、ケンスミスが有名。

弦を支えることだけに徹した、支柱を作るような構造。

このように、ナットは“弦を支える”という役割を果たせば成立する。

スキャロップドナットの他にも、いくつかユニークなナットが存在する。

でも語り始めると2日くらい止まらないのでその話はまた今度にしよ。

②弦と弦の間を決めること。

7弦ギター黒水牛の角ナット
RMI #12 – Cocytus(コキュートス)

ナットの機能として重要な機能。それは弦と弦の空間をどのくらい離すか。

いわゆる“弦間ピッチ”と呼ばれている。

弾きやすさに大きく影響するため、エレキベースの仕様書には明記してあることが多い。

しかし、表記はブリッジ側での計測がほとんど。

ナット側の“弦間ピッチ”を明記することは少ない。

ただ、ナット側での弦間ピッチも確実に弾きやすさを左右する。

4弦ベースブラスナット交換

例えばこんなナットの調整方法がある。

  • 握り心地重視の中心寄せ。
  • 手の大きな方のための外側寄せ。
  • 弦と弦の空間を統一する溝切り方法。
  • 弦落ち対策として低音弦側に全体を寄せる方法。

ちなみに僕は後者の2つを組み合わせた、“弦と弦の空間を統一”して、さらに“低音弦側に移動させる方法”が大好き。

“弦と弦の空間を統一”する理由は、スラップ奏法の際に指の入り心地を均一にすることができるから。

あとは複雑な和音を演奏する際、隣の弦との距離が均等であるため、任意の場所を押さえやすいから。

さらに不本意なミュートも起きにくく、和音を綺麗に鳴らせる。“Periphery – Pale Aura”とか弾く時に最適。

そこに弦の位置自体を“低音弦側に移動する方法”を加え、チョーキングやビブラートなどのベンド奏法の際に弦が指板から落ちる現象を減らす。

モッキンバード指板弦落ち対策
ピンク : 弦と指板端までの間隔が狭い
ブルー : 弦と指板端までの間隔が広い

ブルーの矢印のように配置することで、1弦側のスペースが広くなる。これによりビブラートで1弦を揺らしても、弦が指板から落ちることが少なくなる。素晴らしい。

あ~ぁ、また特有の早口で話してしまった…

たぶん、なに言ってるのかわかんないと思う。でも許してほしい。ただ好きなナットの構造を共有したかっただけなんだ…

もしこれが理解できた人は今すぐギターを作った方がいい。完成したら公園でギター広げてピクニックしよう。春だし!

③弦をペグまで誘導すること。

モッキンバード黒水牛の角ナット交換

これもナットに任された、大切なお仕事。

ヘッドの角度やペグの位置、世の中にはたくさんのタイプがある。

角度つきヘッドなのか、落とし込み式のヘッドなのか。

ギブソンの3対3で置かれたペグなのか、フェンダーの6連タイプなのか。

いずれも決まってペグに向かってまっすぐ溝が切られているか。これが大切だと考えている。

どんな形状でも、珍しい素材を使っても構わない。

しかし、溝と弦のカーブが一致し、弦がペグに向かって張られていること。これを守っていきたい。

「ルールを守って楽しくナット製作!」

遊戯王みたいに言うな。

まとめ

どうだろう。

深夜に寝れなくなった勢いで書いてみたが、楽しめただろうか。

『ナット』とかいう、小さいパーツ1つにピントを絞ってもこんなに遊べる。楽器の沼へようこそ!って感じの記事になったと思う。

間違っていることもあると思うし、みんなの方が詳しいこともある。なので色々教えてください。

ここまで読めたあなたとはきっと仲良くなれる!そう確信している!

んじゃ、僕は寝ます。

おまけ

4弦ベースナット交換ナット溝掃除

“楽器製作所RMI”ではナット交換の前に、ナット溝の掃除を行います。

ナットの置く位置に凸凹があると、取り付け後にトラブルが起きやすくなるからです。

4弦ベースナット交換ブラスナット

既製品をそのまま取り付けることはございません。

楽器に合わせた“ナット”を製作しています。

4弦ベースナット交換ブラスナット

[ナットの制作と交換 : ¥9,790 ~(税込)]

おわり。

【アウトドア&持ち運び用】旅するミニベース『#14 – Cetus mini』【楽器製作所RMI】

どうも、るいなです。オタクです。

普段は山梨県でギター工房を運営しています。

あとは記事を書いたり、好き放題をしています。

特技はエレキギターやベース、アコースティックギターの修理。

趣味は廃墟で楽器を振り回すことです。

今回も屋外で、新作の楽器を振り回してきました。

ロケ地は廃道。ドライブ中に見つけた、お気に入りの場所。

新作の名前は『#14 – Cetus mini』。

読み方は“なんばーじゅうよん、けーとすみに”。

キャンプやバーベキューなどのアウトドアで、焚き火をしながらポロロン鳴らして遊んでみたり。仕事で出張に行く際、こっそりアパホテルに持ち込みたい“ミニベース”。

ウクレレのケースに収納できるようにつくったので、気軽に持ち出してお出かけをすることができる。

“一緒に旅するベース”、そんなコンセプトで製作を開始した。

始まりは冬。ヤンキー座りでボディ材を貼り付けることとなる。

ボディの材質はスポルテッドオーク。こう見えても立派な木材。

ただ、この大航海時代の宝の地図のような柄を持つ木材はとても脆い。

通常のオークという木材は、家具にも使われており、馴染みが深い。

しかし、“スポルテッド・オーク”は聞き覚えがないはず。

スポルテッドとは、簡単に説明すると菌類による木材の腐敗らしい。

木材の隙間に水分が入り、そこから菌類が繁殖する。そして木材を腐らせ黒い柄が出現するとのこと。

個人的には、“バクテリアの生存権争いの痕跡”だと思っている。

こうして、ミクロの世界で何十年もの時間をかけて生成されるため、スポルト材は凝縮した大自然を楽しむことができる木材のひとつ。

そしてこの“スポルテッド材”という朽ちた木材をボディのメインに使う楽器は少ない。

なぜなら柔らかく、すぐに砕け散るから。

しかし、この“スポルテッドオーク”は何故か硬い。いや、なんでだよ。

謎過ぎるけど、落としたり叩いたり潰しても、ボロボロに砕け散ることはなかった。

そのため、ボディに丸々使用してみた。

一応、強度や音質を考え、中心部には硬くスポルトしていない部位を使っている。

画像中央上 : 色の濃い部分は朽ちておらず、とても硬い。

そんなスポルティング・オークを保護する塗装は「プルプルグロスフィニッシュ」。

これ、実はマット(艶消し)にするか、グロス(艶アリ)にするかInstagramでアンケートを取った。

結果、マットフィニッシュを希望する声が圧倒的に多かった。

でもごめん、グロスにしちゃった…

アンケートで聞いた意味がまるで無い。

ネックシェイプはいつもの左右非対称。

1弦側が分厚く、4弦側が薄い。

2016年製のSkervesen Guitars を軸に、さらに極端に傾斜をつけたようなイメージ。

ヘッド裏とネックグリップの境目もみてほしい。

ほぼ同じ高さにも関わらず、しっかりとボリュートを感じる段差。

弾き心地にはなんのメリットもない。

むしろ、凹凸が邪魔で演奏する際はデメリット。

許してほしい。

単純に造形を楽しむ楽器があってもいいじゃないか。そう思うことしか出来ない無駄なボリュート。

まあ、機能的には無駄。無駄をどれだけ楽しめるか。これは人生。話が壮大過ぎ。

ネック自体の素材はメイプル。

ノリノリでボディと接着した思い出。

そして指板もメイプル。

デザイナーにオーダーした直筆のインレイが目を惹く。

そう、今回はフレットレス。“フレット”という金属の棒が無いため、好き放題してくれと頼んだ。

機能としては無意味だけど、フレットレスベースだからこそ出来るデザインに仕上がった。

ヘッドにも描いてもらった。

普段は下の画像のように、別の木材を貼り付けて境目を作っているが、今回はイラストで表現していただいた。

ちなみに、このヘッドシェイプの名前は“Cocytus”。

コキュートスヘッド、と呼んでほしい。

これは1作品目の楽器からずっと使っているデザイン。

ナルシストなので、このヘッドが世界で1番かっこいいと思っている。

そして、ボディシェイプの“Cetus(ケートス)”はくじら座を意味している。

理由はボディの形がくじらの横顔に見えたから。

そのケートスのミニバージョンなので“Cetus mini(ケートスミニ)”と命名。

安易すぎるけど気に入っているのでヨシ!

続いて、肝心の音を出すためのシステムについて紹介する。

ご覧の通り、音を取るピックアップと呼ばれるマイクは見当たらない。

音量を調整するつまみもない。

ボディには何にもない。

しかし、安心してほしい。

音は“ピエゾピックアップ”で取ることができる。

簡単に説明すると、このピエゾタイプのピックアップは弦の振動を音という信号に変換している。

ちなみに普通のエレキギターやベースは“マグネティックピックアップ”が搭載されている。これは磁力で弦の音を増幅する仕組み。ピエゾピックアップとは根本的に構造が異なる。

どこにそのピックアップがあるのか。

答えはサドル下。

ミミズみたいな赤い線。これがピエゾピックアップ。

ちなみに、この赤いラインが透けて表に見えるようになっていることにお気づきだろうか。

そう、この赤色を使わない手はない!

ということで、サドルを透明にしてある。

下に仕込んだ赤いピエゾピックアップの色を、サドルの表面に浮き出すことに成功。

血管みたいで本当にかっこいい。

ところで、音量はどこで調節すると思う?

答え : 調整しない。

アンプに繋げばすぐに音が出る。

そもそも、ミニベースは旅行などの出先で気軽に音を出して遊ぶための道具。

トラベルベースとして仕事は、ボリュームノブなんて無くても十分に果たしている。

とはいえ、後からつまみを付けることができるようにスペースは確保してある。

困ることは何もない。

てか、このアクアリウムみたいな裏蓋はなに?

シールドを繋ぐための銀色のシリンダージャック。

六角の黒いネジと、それを締結するインサートナット。

木材を魅せるため、側面に這わせた配線材。

そして、ボディ材であるスポルテッドオークの断面。

この全てを、ロゴが刻印されたアクリル越しに眺める。

故に、アクアリウム。

裏蓋は厚さ10mmで削り出した。八景島シーパラダイスの水槽とほぼ同じ厚み。

透明であるため、ネジの頭が埋まるように仕込まれていることがはっきりわかる。

そしてこの厚みには理由がある。

斜めから見ることで、このようにロゴが二重になるのだ!

普通のギターやベースのような、5mm前後の裏蓋ではこのような表現は出来ない。

正気の人間がやることではないので、アホの裏蓋と呼んでいる。

そして、ナットもサドル同様にアクリルで製作した。

普通の楽器と大きく異なるのは、このナットの埋め込み方。

よく見ると、指板の端までナットが通っていない。

『指板の“中”にナットを埋める』

これが本当に弾きやすい。

ナットの端に指が当たらないので、握り込んだ時の優しさが違う。

あまりにも優しい。そして見た目が美しい。

アクリルナット。アクリルサドル。アクリル裏蓋。全てアクリルで統一。

最後に少しだけ、このよくわからない構造について語らせてほしい。

オタク特有の早口を惜しみなく展開することになるので、読み進めるには少し覚悟が必要。

見ての通り、ネック材がボディの外側まで突き抜けている。

この構造を持つ楽器は世界的にも数が少ないんだけど、見た目だけでなく、機能的にも優れていることに気が付いた。

まずは普通のジャズベースと比較してほしい。

RMI #11 – Cthulhu

一般的なベースは、このように“ボディの内側”にネックや指板を収めている。

しかし、この構造はその当たり前を打ち壊す。

このように指板とネックを“ボディの外側”に突き出すことで、弦を留める位置をどこまでも伸ばすことが可能となった。

つまり、弦長(スケール)を好きな長さに設定することが出来る。

スケール伸ばし放題。

「扱いやすいボディサイズでも、鳴りはしっかり欲しい」

特に小柄な日本人には、このような希望を持つプレイヤーが多い。

このデザインはボディサイズを変えずにスケールを伸ばすことが出来るため、その希望を果たせる。

ひとつの正解だと思っている。

みて。

ボディの外側から弦が張られているグフフ…

先ほど説明した構造により、普通のベースでは考えられない位置から弦が張られている。アホ。

サドルも弦のボールエンドも、全部ボディの外側に出ているグフフ…

あと、ネック材がブリッジの機能も兼ね備えている、この機構がたまらない。つくるのめちゃくちゃ大変だけど!

この構造で有名なのはStradi bassさん。ストラディのファンとして、いつか実現させたかったデザイン。ようやく形にすることが出来た。

ちなみに、この楽器はマルチスケール。

マルチスケールとは…
ひとつの楽器の指板に複数のスケールがあること。主に低音弦側が長く、高音弦側が短いスケールで構成される。ギター・ベース問わず普及している。ダウンチューニングを多用するメタル系の楽器に採用されることが多い。

というわけで、ファンドフレットとほぼ同じ意味で使われていることが多い。

だが、今回は敢えてマルチスケールと呼ぶ。フレットがないからね。

オタクだけが気にしている、マルチスケールのインチ差は以下の通り。

一般の方はスルーしていただいて構わない。

インチの差“20~17inch”。
ミリに換算すると“510~432mm”。
4弦が510mm。1弦は432mm。

なぜミニサイズのスケールを採用したのか。

それは、ウクレレのケースに収納したいから。

専用のケースを必要とせず、市販で売っているウクレレのケースで持ち運びできること。

これが魅力的すぎる。

ウクレレのように気軽に旅行に持っていける、一緒に旅をするトラベルベースをつくりたかった。

ちなみに4弦の弦長はバリトンウクレレと同じ。

1弦の弦長はテナーウクレレと同じ。

エレキウクレレベースという解釈も出来る。

『Beta Strings』
ウクレレ専用フロロカーボン弦
【楽器製作所RMI】

以上、楽器製作所RMIより新作『4弦フレットレスマルチスケールミニベース』の紹介でした。

どう考えても要素が飽和している。

ここまで読み進めることができた人、いるのかな。

もし、いらっしゃいましたら、Twitterのいいねとか何かしらで反応してほしいです。励みになるから…

【協力】※敬称略

962wood works:裏蓋の刻印

kono.:指板のインレイ

妹:撮影の手伝い

おわり。

休日の朝にコーヒーと添えて聴きたいポストハードコア『Dayseeker – Without me』

学生時代の英語は8点。るいなです。

日本を代表する英語弱者の僕ですら、詩の内容を知りたくなった曲がある。

それは休日の早朝、コーヒーと添えて味わう爽やかなポストハードコア。

最高の1日を開始するために欠かせない曲。

胸を押し潰す切ない歌詞に、明るいシンセサイザーを組み合わせたポジティブなサウンド。

「So don’t you leave me empty when it’s only in my eyes…」

和訳 : 僕の目には君しか映っていない。置き去りにしないでくれ。

これは抜粋した1番好きな詩。日本語だとこんな感じなのかな。翻訳が間違っていたら教えてほしい。

友人に聞いてみたところ、前後の文脈から以下のように訳したとのこと。

君が逃げているものが僕にしか見えていないなら、僕を虚しいまま放っておいてくれないか?

頼りになり過ぎる、帰国子女の説得力は違うね。ありがとう。

理解が深まるほど、胸にゆっくりと杭を打つような痛み。

大好きだ。

そして、カバー動画のこちら。

歌っているのは、イギリスのポストハードコアバンド“October Ends”のボーカル兼プロデューサー。

両腕にはじまり、首までびっしり入ったタトゥーと髭がかわいいニック氏。

冒頭より、色気のある裏声が美しい。

詩の内容に興味を持たせてくれたきっかけ。

友人に教えてもらわなければ、知ることはなかった。

クラフトビール屋さんで、翻訳してもらいながら一緒に聴いた。

お陰でまたひとつ、人生が豊かになりました。

Dayseeker公式インスタグラムより。

この名曲を産み出したのはアメリカのバンド“Dayseeker(デイシーカー)”。

曲のタイトルは『Without me』。

2022年の冬に発表されたアルバムの3曲目に収録されている。

Dayseeker公式Twitterより。

ちなみに、前回のアルバム“Sleeptalk”は2019年に公開。

そして3年ぶりに発表となる、待望の新作“Dark Sun”には、並々ならぬ熱量を感じた。

ボーカルのRory氏が父親を失い、その想いを詩に書き込んだからかもしれない。

【Amazon】Dayseeker Dark Sun CD

ちなみに、新作CDの在庫は残り3枚。

【Amazon】Dayseeker Sleeptalk CD

前作は残り在庫1枚となっている。

“Dark Sun”はアルバムを通して父親への追悼のようにも、ラブソングにも解釈できる。

しかしサウンドは明るく、その悲しみを晴らすよう。

切ない。

感情がどこへ向かったら良いですか、状態になる。

全部聴けとは言わない。

ただ、どうせここまで読み進めたんだ。この一曲だけでも聴いてからページを閉じてほしい。

Dayseeker公式ホームページ

おわり。

【作業用BGM】メタルバンドが産んだ“チルい”曲3選【2023年最新版】

作業、集中できてますか?

僕はできていません。

なぜなら作業用BGMが良すぎて、つい聴き入ってしまうから。

それも、メタルバンドの作るチルい曲がたまらんのです。

普段は暴れているのに、アルバムにこっそり仕込ませた穏やかな一曲が心に浸透するんです。

Chill(チル)とは…
英語のスラング“Chill out”より由来。まったりする・くつろぐなどの意味で使われる。日本では「チルする」「チルい」と言われている。

今回はアーティスト問わずリピートして作業中に使える、お洒落なBGMをご紹介。

どれもメタルバンドのアルバムより抜粋した、激選の名曲。

それでは、いってらっしゃいませ。

ハスキーボイスの脱力ラブソング『Bad Omens』。

いつも聴きやすいメタルコアを提供してくれる、アメリカンロックバンド『Bad Omens』。

アルバム中盤にこっそりと忍び込ませた脱力感のあるラブソング『Who are you?』がたまらない。

メタルコアの影を感じるハスキーボイス。色気が溢れ、あまりにもお洒落。

個人的なイメージは都会の冬。消えない灯を眺めながら、まったりドライブしたくなる。

言わなければメタルコアバンドの曲だとバレることはない、はず!

最高の曲。大好き。

日本のCMにも出演した超有名バンド『BMTH』。

『Bring Me The Horizon(ブリングミーザホライゾン)』。

頭文字を取って“BMTH”なんて呼ばれている、世界的にも有名なアーティスト。

実は、“SONY Xperia 5”のCMで日本のメディアにも出演している。

知らない間に耳にしていた方も多いと思う。

そんな彼らの中で、個人的に最も理解が難しかったアルバム“Music to listen to-dance to-blaze to-pray to-feed to-sleep to-talk to-grind to-trip to-breathe to-help to-hurt to-scroll to-roll to-love to-hate to-learn Too-plot to-play to-be to-feel to-breed to-sweat to-dream to-hide to-live to-die to-GO TO”より、 『Candy truck』という曲を紹介したい。

待って、アルバムのタイトルが長過ぎる。

ちなみに、このアルバムは特徴的な作品。好みが分かれるかもしれない。

そう。今までのバンドサウンドとは少し離れたユニークな曲がたくさん盛り込まれている。

この“Candy truck”は低解像度に聴こえる、ローファイなサウンドが魅力。

しかし、リズムに関してはメタルバンド。キレキレのビートはしっかり現代。

冒頭から徐々に音が増え、盛り上がっていく。

そして5:00〜、謎に落ち着く。

そこからは環境音のような浮遊感でラストを迎える。

終始、レコードを流しているような空間を作り出してくれるレトロな曲。

度数強めのカクテルをゆっくり飲みながら聴きたい。しっぽり。

極悪メタルバンドの創る和風チルアウト『Within Destruction』。

スロベニア産のメタルコアバンド“Within Destruction”より。

どこか和風なコンセプトを感じる2020年に公開されたアルバム“Yōkai”。

そのラストを飾る『Tokoyo-No-Kuni』が新鮮で良い。

なんと言ってもこの曲の魅力はひとつ前の“Sakura”から繋がっている展開にある。

バリバリのモダンメタルコアである“Sakura”から、ひとつの曲のように通して聴くことができる。

“Sakura”のギターソロを演奏しているのは“Jason Richardson”。我らオタクの中では絶対的ヒーロー。

彼のソロを聴き終えた直後にこの『Tokoyo-No-Kuni』でクールダウンする。

これは終盤2曲をセットで聴いていただきたい。

普段は極悪な『Within Destruction』の可能性の大きさを感じることができる。

まとめ

これは僕のリラックスタイム。

完全にカッコつけている。

普段はインスタグラムのストーリー機能を使い、好きな曲をまとめている。

しかし、インスタ程度では語り足りない。好きが溢れてしまった。

そんなわけでブログにまとめようと思った。

あなたのお好みが見つかれば幸い。

共感してくれる人は今すぐ仲良くしてほしい。DMを頼む。リツイートも嬉しい。

おすすめの曲、教えてくれるのも幸せ。

待ってます。

おわり。

【リペア】ピックアップの高さが調整できない不具合【楽器製作所RMI】

どうも。るいなです。

今回は『ピックアップの高さが調整できない』という不具合を修理します。

そもそも“ピックアップ”とは…

弦の振動を取る役割をするパーツです。

例えば、カラオケでは人間の声をマイクで取りますよね。

エレキベースではこの“ピックアップ”が音を取るためのマイクです。

RMI #11 – Cthulhu

エレキギター・エレキベースには、このようなマイクの役割をするパーツがあります。

今回はこの“ピックアップ”の高さが調整できないという不具合。

早速解決していきましょ!

このように、調整するためのネジを上げてもピックアップは沈んでいます。

つまり、ネジが機能していない状態。

ピックアップを外し、中の様子を確認。

画像の通りスポンジが潰れたままで、元の形状へと反発しない状態でした。

どうやら、こちらが原因のご様子。

早速取り替えます。

新しく用意したスポンジです。

今回は高反発で軽く、柔らかいタイプを採用。

【Amazon】平型 ウレタンフォーム スポンジ

このタイプのスポンジへ交換すると、ピックアップの高さ調整を気軽にできます。

ネジが硬くて回らず、ネジ山を潰してしまうトラブルも減りそうです。

取り付けました。

ネジの高さに合わせて、ピックアップが上下するようになりました。

比較するとわかりやすいですね。

こちらは数十年前に購入されたベースとのこと。

もう充分に役割を果たしたスポンジ。取り替えていい頃合いでしょう。

これにて『ピックアップの高さが調整できない不具合』は解決です。

おわり。

『ブラスナット』のメリットとデメリット【楽器製作所RMI】

どうも。るいなです。

今回は少し真面目に書きます。

つまらなかったら教えてください。ふざけます。

こちらは当工房で製作したナット。

『ナット』には弦を支える役割が与えられています。

素材は“ブラス(黄銅)”を使いました。

真鍮(しんちゅう)とも呼ばれている金属です。

http://ruinamiyashiro.jp/repair-5/

ブラスの良いところ。

綺麗な金色が特徴。

高級感のあるルックスに仕上げることができます。

特に、ゴールドパーツを使用した楽器との相性は抜群です。

ナット材として一般的な素材である牛骨。

牛骨と比べると、ブラスの方が粘り気があり、重かったです。

ブラスは、牛骨などの天然素材に比べて密度や油分を気にせず使用できる点も魅力です。

また、繊維方向を気にせず自由に造形することが可能。

『スキャロップドナット』
RMI #06 – Cetus mini に採用。

このように、デザインで遊ぶことが出来ます。

個人的には好きな素材です。

ブラスの悪いところ。

錆びやすい。黒ずみやすい。

ブラスは金属の中でも水分に弱い素材。

緑青(ろくしょう)と呼ばれる緑色のサビが特徴的です。

また、ブラスは空気に触れることで黒ずみます。

さらに、ナットは手に頻繁に触れます。

そのため、すぐにサビや黒ずみが出現します。

ちなみに、5円玉もブラス。

サビていく様子の参考までに、お財布を覗いてみてください。

【Amazon】ナット材 ブラス アコースティックギター/エレキギター/エレキベース

まとめ

金管楽器やアクセサリー、精密機器まで広く使われるブラス。

電気が通りやすく、加工がしやすい。

そして、人体への毒性が極めて少ないことも特徴です。

黒ずみやサビ、色調の変化を楽しめる方におすすめの素材。

経年変化と共に変わる表情が魅力です。

育てる楽しみのあるナット材、“ブラス”。

使い込むほど味が出てきます。

アンティークな雰囲気に仕上げるなら『ブラスナット』で決まり。

おまけ

“楽器製作所RMI”ではナット交換の前に、ナット溝の掃除を行います。

理由はナットの置く位置に凸凹があると、取り付け後にトラブルが起きやすくなるからです。

既製品をそのまま取り付けることはございません。

それぞれの楽器に合わせて“ナット”を製作しています。

[ナットの制作と交換 : ¥9,790 ~(税込)]

おわり。