蓄光素材『ルミンレイ』を指板に埋める【楽器製作所RMI】

インレイの追加 ルミンレイ エレキギター ファフニール

ルミンレイ、というのは商品名。

光を蓄え、放出する現代のハイエンドギターには多用されるインレイ材。

エレキギター 6弦 アッシュボディ

今回はこちらのギターに搭載した。

ちなみにこれは僕が過去につくった作品。

名前は『#08 – Fafnir』。

「なんばーはち ふぁふにーる」

このように呼んでほしい。

インレイ、というのは演奏する際にフレットを見やすくするための印。

ポジションマークという呼び方もされている。

インレイ無しで弾ける人もいれば、これがないとダメな人もいる。

みんな違ってみんな良い。そういうこと。

インレイの追加 ルミンレイ エレキギター ファフニール

今回は直径が2mm。

ブルーに光るタイプを指板の表に埋めた。

埋める位置についてはStrandberg(ストランドバーグ)を参考にしてほしいとのこと。

・1〜12フレットまでは6弦側

・12〜24フレットまでは1弦側

インレイの追加 ルミンレイ エレキギター ファフニール

このように打ち込んだ。

オーナー様はストランドバーグを2本お持ちらしい。

インレイを統一したいお気持ち、とてもわかる。

インレイの追加 ルミンレイ エレキギター ファフニール

インレイが主張しすぎず、ちょうどいいサイズ感だと思う。

最後に、少しだけ過去作品をみていこう。

『#08 – Fafnir』が完成したのは3年前の冬。

インレイの追加 ルミンレイ エレキギター ファフニール

指板の幅は相変わらず広め。

激しいチョーキングの際にも弦落ちしないよう、1弦・6弦から指板の端は広めに取る。

この考え方は今も変わらない。

エレキギター ファフニール エルボーカット

エルボーの汚れがめちゃくちゃかっこいい。

使い込んだときの雰囲気がアンティークになっていくから、塗装は薄くしたいなという気持ちがある。

全体的に小傷はあるものの、とても綺麗に使ってくださっている。

嬉しい。

ライブで暴れるために産まれたモデルなのにね。

エレキギター ファフニール 裏蓋 アルミ削り出し刻印

コスト(費用)という概念のない当時の僕。

・アルミ削り出しの裏蓋。

・木目の繋がるように配置された裏蓋。

・Hannes(ハネス)ブリッジのメッキを剥がして加工したブラッシュドフィニッシュ(艶消し仕様)

限界まで好きなことをやっているな。

今も充分、好き放題してるけどね。

エレキギター ヘッドストック ファフニール

やっぱこれだよね。

はじめての6弦“ファフニールヘッド”となるこの作品。

ボコーテという油分の多い木材を突き板に貼った。

指板もボコーテを使い、ヘッドの突き板とマッチングさせている。

ペグもブラックとシルバーの混合編成。

お金かけすぎだろ…

エレキギター 背面 アッシュボディ

いや〜、シンプルなのに語り尽くせない魅力があるギターだなあ。

楽器として仕上がってきてる気がする…

実は当時納品したファーストオーナー様の元を旅立ち、今はセカンドオーナー様に弾いてもらっている。

しかし、よく鳴らしてくれている様子で楽器の完成した当時とは比較にならない成長をしている。

よく鳴る楽器に育ててくれて、ありがとうございます。

エレキギター ファフニール

これからも朽ちていく楽器の姿を楽しみながら、豊かな音楽ライフをお過ごしください。

今回は北海道から郵送してくださいました。

久々に過去の作品と会えて涙が出ました。なんでだよ

おわり。

11月4日にお写真をいただきました。

【調整】エレキギターの弦高は何ミリがベストなのか【楽器製作所RMI】

ギタリストを悩ませる“弦高問題”。

様々な意見があり、結局どうすればいいのかわからなくなってしまう。

今回は少しギターという楽器に慣れ、「ズバリ弦高は何ミリにしたらいいのか」という悩みを持つ中級者に向けてご提案。

ありがたいことに、某楽器店での勤務経験や楽器製作所RMIというものを運営しているため、様々なギターやベースを診てきたつもり。

正解がわからず、こだわりなく全体調整をお願いしている方には是非とも読んでいただきたい。

RMI#01 – Cocytus は基準よりもさらに低いセッティング。

【1弦1.4mm / 6弦1.8mm】

当工房ではこれを基準としています※12フレット上での計測

その他、多弦ギターも得意としているため追記する。

【7弦2.0mm / 8弦2.2mm】

6弦ギターのセッティングに加え、7弦・8弦をお使いの方はこちらを参考にしてほしい。

2弦から5弦の弦高は“指板R(Radius)”と呼ばれる指板上のカーブの要素も加わってくるため、この場では明記しない。

ちなみに、私は指板20R”(508mmR)のギターの場合はご覧の通りにセットアップ。

これは早弾き専用のセットアップなので基準と比較してもかなり低い数値。

この高さまで弦高を下げることの出来るギターは市販品ではそう多くない。

理想の弦高のひとつ。

弦高調整は12フレットの上に定規を当てて測定する。

弦高は主にブリッジのネジを回して下げることが多く、それはギターを購入した際に付属している工具を使用する。きっと六角レンチで調整するタイプのブリッジがほとんど。

そして気をつけることはサイズの合わない工具は使わないこと。

最悪の場合、空回ってしまいネジ山が潰れる。そうなると修理は困難になる。

新品との交換も検討しなければならないので注意が必要。

ネックの状態や指板ラディアスなど、様々な要因を含む弦高問題。

「正解」とまでは言えませんが、ひとつの基準として覚えていただけましたら幸いです。

・弦の芯線を考慮し、ピックアップのポールピースに合わせた弦高調整。

・弦移動がやりやすいよう、弦の最頂点を基準にした弦高調整。

・弦の振動幅に合わせた、音質重視の弦高調整。

など、それぞれの“理想”があり、突き詰めると沼にはまってしまうのが“弦高調整”。

しかしご安心を。ここまで読んでしまったあなたはもう弦高オタクになる素質があります。

良きオタクであれ。なんだこの締め方は。

おわり。

どこのオタクギター?『Zero Thrash Guitars』をリペアする。

こんにちは、るいなです。

今回はなんとも面白い楽器を調整させていただきましたので報告です。

こちら“Zero Thrash Guitars ”の7弦ギター。

どこの国からやってきたんだよ、と思いTwitterで聞いてみたらなんと国産とのこと。すぐリプライで教えてくれるのなに。愛?

それにしてもTwitterの方々、なんでも知ってる。個人情報の保護なんてあったもんじゃない。

何はともあれ全体調整。オクターブやフレット磨きを進める。

弦を張ったら完成。と思ったのだが、ボディとネックの中心がズレていたり、フレットの高さが均一ではない事に気がついた。

早速オーナー様に連絡。

結果、全て直してくれ。とのことでセンターズレの修正とフレットすり合わせもすることになった。お任せあれ。

最初に“センターズレ”を修正する。

今回のセンターズレはネックとボディの接合部に隙間があり、ネジの固定が甘くなっていた為に左右に傾いたのだと思われる。

ちなみにセンターズレと言っても色々なパターンがあるのでリペアの際は原因の見極めが大切。

この個体はネックジョイント部の穴にインサートナットが入っており、それ自体が傾いていたので矯正。

写真の通り、空いた隙間は埋まらないが、自然な位置に弦が通るようになった。

いわゆる“弦落ち”の原因の一つでもあるセンターズレ。違和感を感じたら信頼のできるショップに相談すべし。もちろん当工房でも大歓迎。

続いてフレットすり合わせ。

すり合わせの方法はこちらにめちゃ細かく書いてあるから読んでみてね。

ほいできた。ぴかぴかだね!

仕上げは『ねこだまり工房』さんの蜜蝋ワックス。これを指板にぬりぬり。サクッと拭きとる。

なんかセールで安くなってたからリンク載せておくよ!

【Amazon】ねこだまり工房 精油入り 自家製クリア蜜蝋ワックス

そしてリペア中、何度も目を奪われたこの杢目。

“ケヤキ”や“タモ”に似ていると感じた。力強さと繊細さを兼ね備えた美しさ満点のトップ材。

そしてペグやピックアップカバーは純正ではなく、あとで加工して取り付けられたものらしい。かなりセンスのいいカスタム。見習いたい。

バックはアルダーかなあ。無難だけどアルダーってめっちゃいいよね。反りが少ないし加工しやすい。そして見た目も落ち着いててね、もうね、大好き。

ネックの形状は完全な台形。弦は27インチスケールにて張られ、いわゆる“バリトンギター”となっている。チューニングどんだけ下げるのよ。

そんな個性の塊“ゼロスラッシュギター”さん、現在はもう生産していないらしい。つまり大変希少。

2012年くらいに話題になったメーカーらしく、こちらは『#5』とのこと。5作品目ってことかな。

それにしても10年前からこんなオモシロギターが国内にて製造されていたのか、と思うと驚くばかり。僕がギターに触れる前から作られていたってことだもんね。すごいなあ。

これからの“オタクギター”はどうなっていくんだ、なんて考えさせられる作品でした。

みなさんはこれからの楽器業界、どうなると予想しますか?

それではまた。

※ブログへの掲載許可は頂戴しております。また情報提供ありがとうございます。今後ともどうかご贔屓に。

おわり。

前回の記事はこちら

【第二章】滋賀県のギター工房にて“ボグオーク”を削る【楽器製作所RMI】