【後編】5つで決まる『全体調整』のポイント【楽器製作所RMI】

こんにちは、るいなです。

いよいよ夏も本番。いかがお過ごしですか。

楽器製作所RMI : 裏道側

僕はポテト&キャラメルラテ両手に夕方のお散歩。あとは読書のために公園までドライブ。そして真夜中に工房の草取りなどしています。ずっと真夜中でいいのに。

さて、今回は『全体調整』についての後編。

前編に引き続き、具体的な作業の内容を解説していく。

では早速。

③オクターブ調整

これは“12フレットでのチューニング”と考えてもらえればわかりやすい。

音程が正確だと音がスッキリする。特に、バンドで音を合わせた際にそう感じられるだろう。

RMI #11 – Cthulhu

開放弦でのチューニングはあなたもしているはず。ただ、それだけでは12フレット以上のハイフレット付近を押さえた時に音程がずれていることがある。

これはギターやベースという楽器の特性上、弦の太さが違うために起こる現象。6弦のギターなら1弦と6弦の太さを比べてみてね。

RMI #11 – Cthulhu : ABM製シングルサドルブリッジ

具体的にはブリッジに付いている駒を前後させ、開放弦と12フレット付近の両方でチューニングし、音程が合うようにする。

これを『オクターブ調整』という。

新品であればメーカーから出荷される際に調整してあるはずだが、演奏していると少しずつズレてくる。

その為、定期的にチェックする必要があるのだ。

④指板のケア

これは2つの項目を指す。

“フレット磨き”と“保湿”だ。

フレットを磨くと右のようにピカピカになる。

これによる恩恵は“フレットの上をスライド”させる奏法(チョーキング・ビブラート)の際に滑らかに動いてくれること。

くすんだフレットでは、ガリガリと削るようにチョーキングするため弾き心地が悪いと感じるはず。

具体的な作業としては、ピカーメガネ拭き用クロスに染み込ませ指でひたすらゴシゴシ!以上!

なんとも地味。

そして指板の保湿は写真の通り。色が濃くなり、艶が出ているのがわかるだろうか。

黒っぽい色の指板であれば、半年に一度ほどこの保湿を行う必要がある。

なぜなら最悪の場合、乾燥しすぎて割れるから。

実はこのような黒い指板(ローズウッド・エボニーなど)は木材が剥き出し。塗装がされていないためデリケートなのだ。

※リッケンバッカーなど、ローズウッド指板でも塗装されている楽器もある。

なのでその最悪のケースを避けるため、半年〜1年に一度は保湿することをおすすめする。

ちなみに当工房ではワックスを使って保湿している。

もちろん、昔ながらのオレンジオイルやレモンオイルでもOK。

個人的には固形タイプが好みだったため、ねこだまり工房さんの蜜蝋ワックスを使用している。

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⑤弦交換

これはその名の通り、弦を新しいものに交換する。

あなたも弦が切れれば交換すると思う。

しかし、そうでなくても時間の経過により金属製の弦はサビたり伸びたりするため、定期的な交換をおすすめしている。

RMI #12 – Cocytus

個人的には『全体調整』をしながら交換してしまうのがよいと思っている。いい機会だし。

音程が合いにくくなってきたり、触ると茶色い粉(サビ)が出てくるならすぐに交換しよう。

実はこの弦交換も奥が深くて。

なんと“弦の巻き数”によっても弾き心地が異なる。

RMI #06 – Cetus mini

多めに巻くと強く張られているように感じ、ロックペグなどにより1周程度の巻き数だと弦がゆるく張られているように感じる方が多い。

これはナットへの“入射角”が影響し、弦が振動する位置が変化するため、弾き心地が変わるのだと推測している。

RMI #13 – Cetus : ロックペグ1周巻き(入射角大きめ)

例えば、当工房の作品の多くはダウンチューニングにも耐えられるよう、弦がナットへ向かう角度は大きめの傾斜をつけている。

ロックペグを採用しているため、巻き数を増やせず入射角を稼げない。代わりにヘッド自体の落とし込みを深くすることで入射角を稼ぎ、ダウンチューニングでも張りを保った弾き心地になるように努めている。

RMI #02 – Cetus

この“ストリングガイド(白い4つ付いてるやつ)”もその入射角を指定するためのアイテム。

「………ちょっと待って」

RMI #05 – Cetus

あまりにもオタクな内容になってきた反省。

ということで“テンション感”については諸説あり、感覚的な話にもなってくるのでこの場では以上とする!

いずれデータを取って明確にしたいね。

RMI #01 – Cocytus : ストリングガイド3ヶ所

なんかめっちゃ語ってしまった!恥ずかし!

【まとめ】

『全体調整』を広く浅く、後編は一部を深めに紹介してみました。いかがでしたか。

初心者からマニアックな上級者まで、楽しんでもらえる記事になっていたら何よりです。

最後の“⑤弦交換”のように突き詰めようとすると色んな説があります。

こんな意見もあるんだな、と参考程度にしてください。

以上、RMI流の全体調整でした。

  • 楽器製作RMI 全体調整 : ¥3,300(税込)~

それではまた会いましょう。

おわり。

【前編】5つで決まる『全体調整』のポイント【楽器製作所RMI】

どうも、るいなです。

「最近へんな雨多くないですか!?」

え、梅雨明けしたんじゃないの…ネック反ってきたじゃん…

というわけで異常気象のおかげか、ひと足遅れて『全体調整』のご依頼が増えてきた2022年の7月下旬。

そう。この“全体調整”というワード、よく言いますよね。楽器屋さんでも案内されたり、聞き覚えがあるかと思います。

では、具体的になにをしているのか。あなたはご存知ですか?

「そんなことも知らないの!?」

なんて思われたくなくて今更聞きにくい気持ち、めちゃくちゃわかります。考えすぎかなぁ。

14歳のギターを始めたばかりの頃、楽器屋さんで

「とりあえず全体調整で!」

ってお願いしたことあるんです。

いやあれ、すごい度胸必要ですよね。

僕はすごく緊張してしまって…だって何を調整してくれるのか知らなかったんだもん…

それ以来、自分で調整するようになりました。社会不適合すぎでしょ。

しかし!

“あなたにはそうなってほしくない!”

自信を持って「全体調整お願いします!」してほしい!

ということで『全体調整』が具体的に何なのかを説明します。

この前編では主に弾きやすさを左右する2つの項目を解説。残り3つは後編にてご紹介。

それでは前編、参りましょう。

①ネック調整

結論から言うと、セットアップとして間違いないのが“やや順反り”の状態。

順反り : 弦の張ってある方向に向かってネックが反っている状態。

しかし、弦を弾く力加減や演奏する曲のジャンルにより“最良”の状態は変化する。

例えばチョーキングを多用する、ブルースを演奏するのであればネックは少し順反り。

速弾きを行うメタル系が好きならネックの状態はストレートでもOK。

ネックの状態は“順反り・逆反り・ストレート”の3種類に分類される。

これらは弦を弾く力と振動する幅を考慮して判断しているため、人それぞれ“最良”が異なる。

あなたの好みを理解してくれるリペアマンが居れば心強い。

RMI #11 – Cthulhu : ネック内部

『ネック』とはその名の通りギターやベースの“首”。

とても重要な部分のため、極端に曲がっている場合は矯正を行う。人間も首が曲がると身体の至る所に不具合が出るでしょ。たぶんそれと同じだよね。たぶん…

RMI #13 – Cetus ネック内部

その矯正は“トラスロッド”というネック内部の長いボルトを回して強制的にネックを反らせて行う。

画像は指板を貼る前のネック。トラスロッドは中心の赤い棒。

トラスロッドは回し切ってしまうと修理が難しく、リペアの代金も高額になってしまう。

そのため、[楽器の寿命=トラスロッドの余裕]とも考えられる。

「いつものセッティングで!」

この一言で伝わる腕のいいリペアマンを知っていれば、それは今後の音楽生活において何よりの財産になるだろう。

②弦高調整

『弦高』これは弾きやすさに直結している。

RMI #01 – Cocytus : 12フレット位置の弦高

この“弦高調整”は主にフレットと弦の距離のことを指し、

「弦高0.7mm達成!!!!」

などと、セットアップを詰めたことにより自己顕示欲を満たそうとする人もいる。僕とかね。

弦高は低ければ“良い”わけではない。

軽いタッチで音を出したい人は低め。チョーキングで良い音を出したい方には高めのセッティングをお勧めしている。

弦高の調整はブリッジにより異なるが、小さいイモネジと呼ばれるもので上下するものが多い。

調整する際はそのイモネジを絶対に無くさないこと。これが何より大切。

当工房での“弦高高め”の具体的な数値は

[1弦1.4mm / 6弦1.8mm]※2022.9.9.更新

としている。

“弦高低め”の具体的な数値は上記にもある自己顕示ツイートを参照してほしい。

新宿駅 南口バスターミナル前。迷惑そうな顔をしつつも弦高を確かめてくれた友人R。

RMI #02 – Cetus

おい、野外で楽器を振り回すな。

【まとめ】

今回の前編では、弾きやすさを左右する『ネック調整』と『弦高調整』を説明してみた。

いかがだろうか。

結論としては『やや順反り』『弦高1.4~1.8mm』が無難かと思われる。

ただ、これはあくまで基準。

気の許せるリペアマンと情報交換をしながら詰める。このひと手間であなたの楽器はもっと力を発揮できる。

後編では、音程やフレットに関しての残り3項目を解説している。

そのまま後半もご覧あれ。

 

よい夏を。

おわり。