いつからだろう。
ギターを弾くだけでは満足できなくなったのは。
ということで、つくった。
実は僕の通う工業高校には、木を加工する科目があった。
高校2年生だったと思う。
「卒業までにギターでもつくろかなあ」
ふんわりと決意した。
気が付いたら木材を買っていた。
思いついたらすぐに行動しちゃうクセ、早く治らんかなぁ。
そしてなんとか、高校3年生のときに完成させた。
卒業制作として提出した。いい思い出。
きったねぇ作業着。
当時は周囲にギター製作なんて、教えてくれる人も居なかった。
日々、Instagramでリサーチ。
ただ唯一、仲のいい先生がいた。
先生が職員室にいることを確認。工具を貸して欲しいと呼び出した。マジで身勝手。
そして強引に工具を借りた。
その後、ちょこちょこ怪我をしながらも先生の力を借りながら完成させた。
まあ、でも売れるクオリティではない。
しかし、弾けるギターではある。
こうして、無理すればギターもつくれる確信を得た。
その数年後、この『Fafnir(ファフニール)』というモデルを完成させ納品した。
以下の写真は製品版。
今回の『#00 – Fafnir』に改良を加えた完成版。
今では当時の自分を褒めてやりたい。
ミスもたくさんしたけど、よく諦めずに最後まで仕上げたな、って。
さて。目頭が熱くなってきたところで本題。
ここからは今回の作品“Fafnir”というモデルの成り立ちを深掘りする。
完全に自己満足を強要することになる。
覚悟して閲覧してほしい。
それでは、いってらっしゃいませ。
デザインはオタクギターの始まりとも言われている“Blackmachine”というブランドより影響を受けている。
そう。いわゆる“BM系”というタイプ。
BM系で有名なメーカーはSkervesen Raptorや、Aviator Predatorなど。
今ではメタル系のギターとしては王道のデザインとして確立している。
ちなみに、本家ブラックマシンは200万円以上の値段が付けられる個体もある。もはや伝説の楽器。
この形状を産み出したダグさんには、どのギターブランドも頭が上がらない。なぜなら彼は『始祖のオタク』。僕は勝手にそう呼んでいる。
ヘッドのデザインも同じくBM系に似せている。
ただし、かなり極端に凹凸をつけた。
理由は強度の実験をするため。
本来は弦を支えるため、強度が必要なヘッド。
どこまで細いデザインが可能か、試験をしてみた。
結果としては、この細さだと少し反る。
弦の引っ張る力に負けて、ヘッドの木材が時間の経過で歪むのだ。
これでギターのヘッドに必要な強度がわかった。
次の作品ではもっと太めにしようと決意した。
ボディの表面はウォルナット。
触り心地のいい木材。これをオイルフィニッシュ。
オイルで塗るだけの、簡易的な木材の保護方法。
しかし、これはあまり好みではなかった。
以降はウレタンという、自動車に使われる塗料を使用することを決意。
ネックはマホガニー。
アコースティックギターなどでは多用される木材。
しかし、これもエレキギターには向かないと感じた。
なぜならアコギよりもネックが長いから。
つまり、木材が反る。
そして、反った時の不具合が顕著なのだ。
以降のネック材は強靭な木材を使用すること。
そして、カーボンロッドという補強材を入れることを決意した。
ボディサイドの形状は“Skervesen Raptor”を参考にした。弾いていて痛くないように45度で削り落とした。
これは正解だった。以降のファフニール全てに採用している。
あとはシールドを差し込む、ジャックの位置がいいよね。
ケーブルを刺したまま地面に置けないので、結果的に膝に乗せる機会が増える。つまり練習時間が長くなる。めちゃくちゃいいアイディアだと思う。
いや、多分そんな意図はないと思う。でも勝手にそう解釈して練習時間が増えるなら吉。
練習はすればするほどいい。
バック材はオーク。
個人的にめちゃくちゃ好きな木材。
家具にも使われているし、かなり優秀。ちょっと重いけどね。そこがまた良い。
ブリッジはハネスが至高。
BM系はボディが薄く、音質が安っぽくなりやすい。
なので、この樹脂製のサドルを採用したブリッジを搭載することが多い。
金属よりも振動を吸収してくれるのか、高音域が抑えられる。
耳に痛くない、マイルドな音になる。そんな気がする。
あと単純にブリッジの面積が多いから演奏中に手を固定しやすい。
ブリッジミュートの多いメタル系の音楽で重宝するサイズ。
ちなみに、これを書いているのは2023年2月12日。
実は『#00 – Fafnir』の完成から5年ほど経過している。
懐かしい。今見ると本当に恥ずかしいミスばかり。
でもいい記念になった。
最後に被写体しながら寝ている姿でも貼っておくか。
おわり。
【謝辞】
工具の使い方を教えてくれたN先生。
職員室で仕事してるのに呼び出してごめんなさい。
そしてわがままに付き合ってくださり、ありがとうございます。
あと、早く僕に木工場ください。