注目すべきは8弦とかヘッドレスとかそういうことじゃない。
そう、なんと言っても価格。価格が魅力的なのだ。
[ 264,000円(税込)]
これは天下のヘッドレスギターブランド、“ストランドバーグ”のOSシリーズに並ぶ価格。
ちなみにこちらは売約済み。
拡散してくれてありがとう!
お陰さまで無事にオーナーが見つかりました。
スペックを紹介する前に売れてしまった個体ではあるが、語りたいことが山ほどある。
ということで今から楽器の徹底解説がはじまる。
準備はよいだろうか。
目次
デザイン
これは『蓮』をモチーフにデザインされた楽器。
8弦ギターの理想を詰め込み、コストパフォーマンスを優先したモデル。
ロゴも蓮の花に見えるだろうか。
抹茶ラテ飲みながら描いたけど大丈夫そ?
ボディ
ボディの材質はアルダーという木材。
1ピースという、継ぎ目のない一枚板を使用した。
アルダー材はとても好きなので終始ご満悦な笑顔でつくっていた。
ちなみに楽器の総重量は約3kg。
カラー
色の名前は“クンツァイトピンク”。
クンツァイトは鉱石から由来している。
パープルにも見える、ピンクのような淡い色合いの石。
ジュエリーコーディネーターの資格も取ったし、せっかくなので鉱石の名前を使ってみた。
これは色をつくっているところ。
明るいところではピンク。暗いところではパープル。
素敵な色だと思う。マジカワイイ
ネック
ネック材はメイプル。
人工乾燥された木材を使用した。
仕入れ先の話によると、木材の中に含まれている水分の量が管理されているらしい。
過去の作品でもこれを使ったが、とても良かったので今回も迷わず採用。
ヘッドの裏側には手書きの製造番号。愛が詰まっている。
それにしてもボリュートがデカい!!!!
6弦ギターのネック形状から、引き伸ばしたように8弦まで造形した。
ネック頂点は6弦ギター。そこに7弦と8弦を付け足したイメージ。
個人的には大好き過ぎてこれしか弾きたくない。そのくらい気に入った。なのでみんなに広めたい。そういう気持ち。
指板
スケールは“28~25.5インチ”。
あまり見たことのないファンドフレット仕様だと思う。
なぜこのスケールを採用したのか。
以前、27.5インチの8弦ギターを製作した。
その際に「惜しい!」という弾き心地だった。
なので0.5インチ、ミリ換算だと1.27センチ長い指板をつくった。
正解。
これは正解した。8弦を“Low E”で鳴らすにはこれがベスト。
僕は思った。8弦を鳴らす理想のスケールは“28インチ”だと。
そして1弦側のスケールは“25.5インチ”。
1弦側はいわゆるフェンダースケール。
これはチョーキングなど、弦を引っ張ることを考えるとちょうどいいスケールだと感じている。
弦を長く張ると、引っ張る力が強くなってしまう。
なので、1弦側は使い慣れたこのスケールがいちばん。
これは指板の磨きが完了したときの写真。
指板の素材はメイプル。
ちょっとだけ杢目が入っているのでかわいい。
「そんな恥ずかしがり屋のメイプルも……ちゅき….」
あ、これインスタで流行ってるやつ。誰か僕のギターバージョンでやろ?
撮影の協力者を募集します。
チューニング
推奨チューニングは8弦から
[E・A・E・A・D・G・B・E]
要するに、ベースの4弦、3弦+6弦ギターのレギュラーチューニング。
そう、この8弦の“E”と7弦の“A”はエレキベースと同じ音程。
最高でしょこんなの。
あほな音が出る。
ギターソロプレイヤーは、一本の楽器でベースラインとメロディを同時に演奏することが可能。
そしてメタルコアプレイヤーは“Low E”を鳴らして楽しくなれる。
何より8弦の“E”の音程は、レギュラーチューニングの6弦ギターのオクターブ下の音程なので扱いやすい。
運指が簡単なのに、音程差のあるリフをつくることが出来る。
“楽器に弾かされる”
そんな感覚を味わってほしい。
フレット
フレットの素材はニッケル。
ステンレスフレットが流行ってるけど、ニッケルフレットが劣っているわけではない。
ご覧の通り、指板の側面を大きく面取りしている。
そして指板の側面からフレットタングと呼ばれる凸の跡が見えない。
これはポジションマークが見やすくなるのでおすすめ。
指板にフレットが乗っているだけかのように見えるので、ルックスもパーフェクト。
ネックジョイント
様子がおかしい。
常識的に考えてネックジョイントのビスは10個も要らない。
いや!待って、聞いてほしい。今回のモデルはロータス。
つまり『蓮』。
あなたは“蓮コラ”をご存知だろうか。
あれは蓮の花が散ったあとに残る花托。
このネックジョイントの理由が知りたい方は今すぐ[蓮コラ]で検索。
全てを理解することができる。
ちなみにネジは全て六角。工業製品感がたまらん。
コントロール
操作方法は簡単。
ボリュームがひとつ。ピックアップのセレクターがひとつ。
ボリュームポットをプッシュすることでハムバッカーをシングルコイル化する、コイルタップ機能を搭載。
最初はとにかくシンプルに。
あとはお好みで改造してください。
『Lotus』は理想をつくり上げるための器です。
キャビティの穴はその為に大きく空けておいた。
拡張して好みに仕上げていく、そんな楽しみ方をして欲しい。
あとはキャビティを大きく空けた恩恵なのか、音に少しホロウ感がある。気がする。気がするだけかもしれない。
チェンバーボディにしなくてもいいじゃん、となってしまった。軽量化もできているし。配線の拡張性も高い。かんぺき?
あ、これは裏蓋ついています。
透明なので裏蓋がないものかと勘違いされて楽しいです。
これはただの趣味。眺めて綺麗だなあ。ってやるための構造。アクアリウムだね。
もちろん裏蓋を留めるネジも六角。
シリンダージャック
これは特にL字のシールドを使うことで恩恵を感じる。
なぜなら、ブリッジの下にシールドを通すことが出来るから。
このように抱えてもシールドが足に刺さることはない。
これがかなり便利。
ヘッドレスギターはシールドを挿すと、この構え方が出来ないことが多い。
造形美しか考えてないように見えるのに、実は機能美がある。
これが大好き。
そして、美しいものは性能も高いことが多い。
いろんなメーカーの部品やネジを触ったけど、そんなことを思った。
ゼロフレット
これはいわゆる“0フレット”。
実はこれ、最近の機構ではない。
モズライトというギターは1963年からゼロフレット仕様を採用している。
昔はナットの精度が高くはなかった。そのため、開放弦の位置に0フレットを打ち込むことで1フレット以降と寸法を合わせたらしい。
かしこいと思う。
なので僕も採用した。
ちなみに、別途でナットも必要ではある。
それは弦の横移動を抑えるため。
ナットの素材は“黒水牛の角”。いつものだね。聞き慣れちゃったね。
それにしても“クンツァイトピンク”を締める、ブラックとシルバーのバランスがいい。
オシャ!なカラーリングだね。
ストラップピン
ストラップピンは普通のやつ。
ロック式にしたい場合は後からいくらでもできるし。
とにかくデフォルトはシンプルに!
ピックアップ
ピックアップはナズグル&センティエント。
今のところ、ベストな組み合わせだと考えている。
僕の『#02 – Cetus』にも採用している。
とにかくデフォルトはシンプルに!
この精神を忘れてはならない。
感想
感想ってなんなんだ。小学生の図画工作か?
いかがだろうか。
新作のヘッドレスギター『Lotus』。
お気に召していただければ何より。
変なギターだなあ、って笑ってくれればそれもまた嬉しい。
この楽器が完成するまで、楽しみに待っていてくれた方。そして相談に乗ってくれた友人。
撮影に協力してくれたモデルさん。そして、この記事を最後まで読み上げたオタクにありがとう。
お陰さまです。
あと、ほんとに全部読めた人は早くギターつくった方がいい。
謝辞
以下、敬称略
モデル:河隻 翠
@sui_kouzeki
指板の製作・人生相談:962wood works
@962ww
おわり。