ことの始まりは5年前の夏。刻は2017年にさかのぼる。
狂ってる。
常軌を逸脱した物欲である。
そして2022年の初夏。ついに手元に届いた。
思い返すと5年間もよく飽きずに探し続けたよね。その執着心には我ながら感心する。
なぜ人はこんなにもボグオーク欲しがるのか。
理由はその希少性にある。
この黒い塊、実はかなり特殊で普通の木のように地上に生えているものを切るわけではない。湖の底などの地中から掘り出されているのだ。まるで化石の発掘。ゆえに流通量が少なく希少。
この材は元々オークであり、本来は家具のような黄土色のはず。それが地底に埋もれ、1000年から推定一万年という長い時間をかけてこのように黒く変化したそう。これを炭化(亜炭)というらしい。
通常ならば生命を終えた樹木は倒れ、微生物などに分解され土に還る。
しかしボグオークは違う。なんらかの偶然が重なり、地中に埋まってしまっているため分解されない。要するに朽ちない。そのため形を保ったまま性質が変化し、化石へと向かう。
そう。タイトル通り、ほんとうに化石になろうとしている木材だったのだ。
ちなみに完全に化石になるには数万年かかるらしいが、その前にレスキューされた恵まれたやつのことを総じて“神代木”と呼ぶらしい。屋久島の神代杉とかは聞いたことある人もいるのではないだろうか。それだよそれそれ。それの西洋バージョンってこと。
今回はこの材を楽器に仕立てるまでの第一話、“ボグオーク”という材についての予備知識編。わかりやすく説明できているだろうか…
「まあ千年くらい埋まってた木が出てきたしギターでもつくろっか!」要約するとこんな感じ。
ということで、これより湖にて沈んだ古代の木材を楽器として現代に蘇らせる。
ヨーロッパかロシア、そのあたりの沼地からやってきたこのロマンの塊。渾身の作品として仕上げるつもりだ。
是非これからの進捗を楽しみに見届けていただきたい。
それではまた。
おわり。