どうも、るいなです。
普段はギターをつくったり、修理をしています。
ブログを書くことと、乗用車が好きです。
今回はエレキギターのメンテナンスについて、自宅で行うことのできる具体的な方法をお伝えします。
ベースもほとんど同じなので参考にしてください。

前提として、楽器は定期的なメンテナンスが必要なものです。
日々の管理方法によってコンディションが長期間よい状態で保てたり、使える寿命すらも大幅に異なります。
いつも楽器店でメンテナンスが出来れば心配する必要はありませんが、それなりに費用はかかります。
しかし、自分である程度のメンテナンスが出来ればどうでしょう。
ギターの維持費を最小限に抑えるだけでなく、いつでも快適にギターが弾けます。
これが何よりのメリットです。

この記事はギターを作ることが好きな僕の目線で、ギターやベースを長く快適に使うために日々気にかけていることと、メンテナンスの具体的な方法をお伝えします。
不具合が出て楽器店に持ち込むことを予防し、自分のギターを管理する楽しさを知ってもらえたらうれしいです。
目次
はじめに
お店に頼むと費用はどのくらいかかるの?
上記は当工房の料金表です。
ひとつの例として、参考になれば幸いです。
基本的に楽器店でのメンテナンス料金は、弦交換で1,000円程度、ネック&弦高調整で3,000円〜5,000円、フレット磨きも行うとさらに費用はかかります。

しかし、このような調整が必要になる前に知識と道具があれば日々のメンテナンスで未然に防げることが多いです。
自分でメンテナンスを行うメリットは費用削減のためだけではありません。
自分のギターのことを深く知ることができるため、演奏中や日々の小さな変化にも気づきやすくなります。
なにかトラブルがあった時にも原因の検討をつけられるため、その場で対応できるスキルが身につくのもよいことだと考えています。

基本的なお手入れ方法
ボディの清掃
塗装保護のために、演奏後はなるべくボディを拭きましょう。
楽器専用のクロスと呼ばれる布を使用し、主に指紋と汗を掃除します。

特に弦の下やブリッジ周辺は、削れたピックの粉や埃が溜まりやすいです。
固着する前に拭き取るとよいでしょう。
塗装の仕上げによるメンテナンス方法の違いは、主に以下の4つに分類されます。
グロスフィニッシュ(艶アリ)の手入れ方法

多くのギターがこのグロスフィニッシュで仕上げられていることが多いです。
光をよく反射するのが特徴です。
素材がウレタン系であることが多いため、最も強固で劣化も遅いことが特徴です。
メンテナンス方法としては、月に1回程度グロスフィニッシュ仕様専用のポリッシュを使用します。
基本的に汚れはつきにくいですが、メンテナンスをすることで更に汚れが簡単に落ちやすくなります。

例えるならば、コーティングするようなイメージでしょうか。
手順としてはポリッシュをクロスに少量吹き付け、円を描くように塗布した後、乾いたクロスで拭き取るだけです。
ギターの中では最もメンテナンスが簡単なタイプです。
※ボディに直接ポリッシュをかけないようにしてください。拭き残しが埃の溜まる原因になったり、吹き付けの量によっては配線のトラブルを招きます。
サテンフィニッシュ(艶消し)の手入れ方法

サテンフィニッシュと呼ばれる艶消しの塗装には通常のポリッシュは使用しないでください。意図しない場所に艶が出てしまいます。
光を反射せず、サラサラとした触り心地が特徴です。
クリーニングクロスには、サテンフィニッシュにも使える専用のポリッシュをつけるようにします。
楽器専用のクリーニングクロスを使用して、力を入れずに乾拭きします。
力強く擦ってしまうと、その部分だけ艶が出てしまいます。
何度も拭くことで、研磨することと同じになってしまうためです。

神経質になることはありませんが、メンテナンスの際は少しだけ注意が必要です。
グロスフィニッシュよりも指紋や汚れが目立たず、メンテナンスの手間も少ないので管理は簡単な部類です。
ラッカー塗装の手入れ方法

ラッカーと呼ばれる塗料を使った楽器は、扱いに注意が必要です。
基本的には楽器専用のマイクロファイバークロスを使用して、乾拭きする程度で充分かと考えています。
塗装を意図せずに剥がす可能性があるため、ラッカー塗装に対応していないポリッシュは使用してはいけません。ベタベタに溶けることもあります。

汚れがひどい場合は、中性洗剤を薄めた水で拭いたあと、必ず水拭きして洗剤を完全に除去しましょう。
適切な手入れを行えば、ラッカー特有のしっとりとした触り心地を長期間保つことができます。
手間はかかりますが、使用に伴う自然な剥がれにより経年劣化を楽しむことが出来る点はラッカー塗装でしか味わえない魅力です。
オイルフィニッシュの手入れ方法

オイルフィニッシュは木材の自然な質感を活かした塗装の膜が薄い、肌触りの特徴的な仕上げ方法です。
他の塗装と比較しても塗膜の保護がほとんどされていない状態に近いため、乾いた柔らかい布で乾拭きすることが基本です。
水分が木材に浸透しやすいため、水拭きは避けます。
それでも頑固な汚れが付着した場合は、固く絞った布で軽く拭き取り、すぐに乾拭きして水分を除去してください。

アルコール系洗剤や研磨剤入りクリーナーを使うと、ボディの色が変わってしまうことがあります。
オイルフィニッシュは擦れや汚れが、味として魅力にもなっていく味わい深い仕上がりです。
おおらかな気持ちで、使い込んだ風合いを楽しむのがよいかと思います。
ギターの塗装を守るために日々の注意点

ギターの塗装は多少の配合成分は違えど、ほとんどが上記の4種類に分類できます。
自分のギターはどの塗装なのか、把握してからメンテナンスに取り掛かりましょう。
下記の3つは、どの塗装にも使えるギターを保護するためのチェックシート。
現状と照らし合わせて確認してみてください。
①直射日光や高温多湿などを避ける
目安としては、人間が過ごしやすい環境と同じくらいです。具体的には気温25度前後、湿度50%前後くらいかと思います。
②急激な温度変化は避ける
夏の車内からクーラーの室内への移動、冬場の乾燥では木材が割れることもあります。なるべく温度や湿度の変化が緩やかになるよう、心がけて管理してあげてください。

③アルコール系溶剤や強い化学薬品での掃除を避ける
メンテナンスの際は必ず、楽器用のポリッシュをお使いください。また、ギターの塗装の種類を把握してメンテナンスをしましょう。心配な場合は、ボディの目立たない部分に少し付けて反応が出ないことを確認してから使用してください。
おすすめボディ用ポリッシュ
僕が実際に使っているポリッシュを添付しておきます。

【Amazon】Ken Smith ケンスミス Pro Formula Polish
「ケンスミス」という、100万円前後のエレキベースを製造するブランドのポリッシュ。
このポリッシュはもう何年も使い続けていますが、トラブルは今のところありません。
いい匂いだし、仕上がりの肌触りがよい。
しかも、オイルフィニッシュ以外のほとんど全ての塗装に使えます。
※オイルフィニッシュの楽器はそもそもポリッシュを使わず、乾拭きします。
ネックとフレットボード(指板)の手入れ
ネック裏の手入れ

ネック裏は手汗の影響を最も受けやすい部分です。
演奏したあとは、なるべく乾いたクロスで拭き取ります。
頑固な汚れがあれば、クロスを少し湿らせて使ってもよいでしょう。
塗装はボディと同じ塗料の種類であることがほとんどです。
ボディに使用しても問題がないポリッシュは、ネックの裏に使っても問題がないことが多いです。
フレットボード(指板)

指板のメンテナンスは木材の種類によって異なります。
ローズウッドやエボニーなどの黒っぽい木材が使われた指板には、年に2〜3回オイルを塗る必要があります。
買ったばかりの楽器でも、オイルが足りずに乾燥して指板が割れてしまうことは珍しくはありません。
トラブルを防ぐためには弦を外した状態でオイルを指板に薄く塗り、15分ほど浸透させてから余分なオイルを拭き取るだけです。難しくないと思います。
弦交換の際に同時に行ってしまうのがよいでしょう。

メイプル指板の場合は、塗装がされていることがほとんどです。
そのため、オイルを塗る必要がありません。
乾いたクロスで、フレットや指板の汚れを拭き取る程度でメンテナンスは完了です。
メイプル指板は、塗装の色によって白っぽいものから黄色に近い飴色に塗られています。
指板の見分けがつかない場合は、最寄りの楽器店に楽器を持ち込んで聞いてみると教えてくれるはずです。
お問い合わせにてご連絡いただければ、私が判断してメンテナンス方法をお伝えいたします。
弦の交換

ギターやベースの弦は消耗品です。
金属であるため錆びたり、音程が安定しなくなった際には交換しましょう。
交換の頻度は決まっていませんが、弦は張っているだけでも伸縮と酸化によって消耗しています。
目安としては、3ヶ月に1回交換すると安心です。
弦交換は、自分自身でできることが1番よいと思います。
しかし、最初は何もわからないと思います。
正しいやり方が身につくまでは最寄りの楽器店に持ち込んで店員さんに教えてもらいましょう。
私も何度も聞いて、ひとりで弦交換が出来るようになるまで教えてもらいました。ありがたいです。

弦交換は正解がひとつではないため、何人か詳しい人に聞いてみるとよいです。
自分に合ったスピーディーで楽なやり方が見つかると、今後も弦交換がストレスにならずに楽しめます。
ギターが正しい状態なのか確認する方法
現在の状態を知ることができる目安として、弦高と呼ばれるものを指標にする方法があります。
弦高とは、12フレットの頂点から弦の1番下の距離のことを指すことが多いです。
測り方はこんな感じ。

1弦と6弦の2ヶ所で、それぞれの12フレットの位置で測ります。
楽器が正しい状態である場合、以下の寸法以内になっていることが多いです。
6弦ギターの場合は以下の通りです。
- 1弦 1.5〜2mmの間
- 6弦 2〜2.5mmの間
4弦ベースの場合は以下の通りです。
- 1弦 1.5〜2.5mmの間
- 4弦 2〜3.5mmの間
※ベースの場合は、演奏方法により基準とする弦高に幅があります。
上記の数値よりお手元の楽器の弦が低い、もしくは高い場合は楽器の状態が悪い可能性があります。
判断が難しい場合は、念のため楽器店の店員さんに診てもらうと安心です。
当工房に楽器を送っていただいても、診断が可能です。

自宅でのメンテナンスに必要なもの
工具リスト
自宅でのメンテナンスには、以下の道具があると便利です。
- 六角レンチ(楽器に付属していることが多いです)
- ドライバー(プラスとマイナスがあれば十分です)
- ニッパー(弦交換も行う場合は必要です)
- クリーニングクロス2枚(指板用とボディ用)
- スケール(弦高を測るための定規です)※端が0からはじまる、余白のないもの

最初に費用はかかりますが、自分の楽器を自分自身で管理できるため、理想に向けて思い通りに調整ができるようになります。
そこまで上達すれば、友人のギターを診た時にも調整ができるかもしれません。
消耗品リスト
- 交換用の弦
- 指板用のオイル(メイプル指板は不要です)
- ポリッシュ(お持ちの楽器に適合したものをお選びください)

フレット磨きなども含めると、さらにできることは増えますが最低限をお伝えいたしました。
消耗品も調べるほどに、様々なメーカーの商品が存在することがわかってきます。
好みの香りのポリッシュや、好きな触り心地の弦を探すなど、楽しみつつメンテナンスをしていただければ何よりです。
お店に依頼すべき作業
自分でできることは多いものの、専門知識と特殊な工具が必要になることもあります。
トラスロッドなどデリケートな部分の調整は、最寄りの楽器店か信頼のできるリペア工房にご相談ください。

当工房がお任せいただくことが多いのは、フレットの交換やすり合わせ・ナットやサドルの交換・電装系の修理・全体のセットアップです。
その他にはフィンガーランプなどのパーツの製造や取り付け、ボディの塗装まで行うことがあります。

まとめ
日々のメンテナンスにより、楽器店での調整頻度は大幅に減らすことができます。
楽器も自動車のように、適度に使ってあげることでよい状態を長い間維持してくれます。
基本的な掃除から弦交換、簡単な調整作業までマスターできればもっと愛着を持って楽器が演奏できます。
ギターやベースの持っている最大限の能力を引き出せるのは、楽器を所有しているご自身であると考えています。
相棒のギターやベースを長く大切に使い続けるために、たまにはメンテナンスしてあげてください。
