【再塗装】最高峰の美しさ、PRSのギターをリフィニッシュする【楽器製作所RMI】

どうも、るいなです。

お久しぶりです。

元気してました?

僕は白湯を片手に生卵を2つ飲み、算数の問題集が解けなくてドライブをしています。

えへへ。

でも見て!

これを“リフィニッシュ”した!

ちなみに元々の色はブルー!

このメーカー(PRS)のお得意カラーを全て剥がして塗り替えてしまったので多少の罪悪感はある。

そう!今回はブルーからグリーンに再塗装した話。

そして、このブランド特有の塗装についてわかったこと。

以上、2点の報告をしていく。

では早速。

リフィニッシュ(再塗装)のお話

はい。まずはリフィニッシュ後の全体像。

かなり美しいね。自画自賛。

ご依頼をくれたオーナー様からも

「このPRS、眺めながらお酒が飲めそうです!」

と好評だったのでとても嬉しい。

うんうん、わかるわかる。

目をつぶって頭を縦にゆっくり振った。

言っておくけど、楽器をおつまみにお酒を飲むのは当たり前じゃないからね。

さて、施工をはじめていこう。

ギターが届いたらすぐにパーツを外す。

これがやる気の表れ。

曲線美を損なわないよう、丁寧に塗膜を落とす。色の落ち具合が均等になるように気をつける。

塗装を剥がす絵面は地味すぎるので説明を省く。ヤスリで削り落とすだけだし…

ここから色を塗るのがいっちばん楽しんだな!これが!

待て。

その前に一度削り落とした黒いところを塗り直さねば。

曲線を綺麗に塗るのは難しい。

まあ、上手にできたのでテンションは最高潮。

お待ちかね。着色する。

見る角度で変色を楽しめる、『奥行きのあるグリーン』を目指す。

そのために、最深部に埋めるための“青色”を塗る。

グリーンを塗るのはまだ早いのだよ。

次に黒色を薄く塗る。

この段階で気をつけていることは3つ。

  • 青色が見えること
  • 黒色が見えること
  • 木目、及び杢目が見えること

青と黒、良い下地が出来上がった。

ようやく目標の『グリーン』に染められる。

いや、海ではないんだよな。むしろ山。

【Amazon】水性ポアーステイン

【Amazon】キャンディーグリーン (自動車用)

木材を水性のステインで染めたあと、ウレタンの“キャンディーグリーン”で塗装するとこうなる。

ただ、少し安っぽい緑色だと感じた。

なので。

仕上げのクリア層に少しブラックを足す。

どうだろう。深みのあるグリーンになったと思う。

色が決まったら透明の塗装で保護。

磨いてパーツを取り付ける。

完成。

めっちゃかっこいいなこのギター。

はい、リフィニッシュ編は以上。

以降はこの“ポール・リード・スミス”特有の塗装のクセについて説明する。

購入を考えている方や既に所有している方、また、ただのギターオタクに向けた内容となっている。

上記に当てはまる方はこのまま読み進めていただきたい。

リフィニッシュ:104,610円(税込)

“Paul Reed Smith” の特徴【その1】

「ポール・リード・スミス」略してPRS。

このブランドはボディの色が美しいことで有名。

そして特徴が2つある。

ひとつは白濁。

ピンクで囲ったところが白っぽい。

パーツを取り外してみるとわかりやすいかもしれない。

ボディも全体的に透明度が低いことがわかる。

かなり昔に製造された個体なので、経年劣化として不思議ではない。

ただ、PRSは経年劣化で白濁する個体が特に多い。

その原因は謎。

私は硬化剤の濃度。塗装環境の湿度。塗装の厚さ。この3点に要因があると推測している。

以前、手が滑り塗料に硬化剤を多めに入れてしまった。その塗料が破棄する際に白濁していたことがあるからだ。

あと塗膜がかなり分厚い。PRSの塗装を剥がしたことのある方ならわかると思う。

他にも情報があれば、ぜひ教えて欲しい。

“Paul Reed Smith” の特徴【その2】

もうひとつの特徴は褪色だ。

例えば、青色から灰色になることがある。

原因は木材の収縮による塗料の染み込み具合。時間の経過による変質。また、日光も関係していると考える。

ただ、こちらも明確な原因は不明。

要するに色が褪せるということなのだが、今回は見受けられなかったのでこれ以上語ることは控える。

以上『白濁』と『褪色』がこのPRSという楽器の難点であり特徴。そして魅力でもある。

ブルーが褪色したあとの、デニムのような渋い色合いを堪能するのもまた一興。ダンディな楽しみ方だと思う。

おまけ

第一印象はグリーン。

ただ、よく見ると奥地の青色、そして浅瀬の黄緑色が顔をのぞかせる。

見る角度や当てる光の種類により見え方が異なる。

これこそが僕のやりたかった『グリーン』。

青や黒を内包しているおかげか、とても深みのある色に仕上がったと思う。

日焼けしたアイボリーのピックアップマウントエスカッションが良い味を出している。

オーナー様より、「フレット以外の金属パーツは磨き過ぎないでくれ」との要望をいただいていた。

しかし、これが正解だった。

お陰様でとてもいい雰囲気の楽器に仕上がった。

全てをわかっていらっしゃる。

ちなみにフレットのバリ取り、サイドのエッジ処理も行った。

画像を拡大してほしい。

角が取れ、ピカピカに研磨されていることがわかるはずだ。

指板も保湿した。

PRSの代名詞的な存在『バードインレイ』ではなく、『ムーンインレイ』であるところにも注目してほしい。

うん、今回の報告はこんなところかな。

最後に、好きなクリエイターを紹介してから去ろうと思う。

18世紀のロココ調がグロテスクにアレンジされたシルバーアクセサリーブランド『スペルヴィア』。

似合うような人間になってみせます。スーツ着てスペルヴィアを付けたら絶対サイコーだろ…!!!

ではまた。

いつも相談に乗ってくれるH君。今回も色味のアドバイスをたくさんくれました。ありがと。

【調整】エレキギターの弦高は何ミリがベストなのか【楽器製作所RMI】

ギタリストを悩ませる“弦高問題”。

様々な意見があり、結局どうすればいいのかわからなくなってしまう。

今回は少しギターという楽器に慣れ、「ズバリ弦高は何ミリにしたらいいのか」という悩みを持つ中級者に向けてご提案。

ありがたいことに、某楽器店での勤務経験や楽器製作所RMIというものを運営しているため、様々なギターやベースを診てきたつもり。

正解がわからず、こだわりなく全体調整をお願いしている方には是非とも読んでいただきたい。

RMI#01 – Cocytus は基準よりもさらに低いセッティング。

【1弦1.4mm / 6弦1.8mm】

当工房ではこれを基準としています※12フレット上での計測

その他、多弦ギターも得意としているため追記する。

【7弦2.0mm / 8弦2.2mm】

6弦ギターのセッティングに加え、7弦・8弦をお使いの方はこちらを参考にしてほしい。

2弦から5弦の弦高は“指板R(Radius)”と呼ばれる指板上のカーブの要素も加わってくるため、この場では明記しない。

ちなみに、私は指板20R”(508mmR)のギターの場合はご覧の通りにセットアップ。

これは早弾き専用のセットアップなので基準と比較してもかなり低い数値。

この高さまで弦高を下げることの出来るギターは市販品ではそう多くない。

理想の弦高のひとつ。

弦高調整は12フレットの上に定規を当てて測定する。

弦高は主にブリッジのネジを回して下げることが多く、それはギターを購入した際に付属している工具を使用する。きっと六角レンチで調整するタイプのブリッジがほとんど。

そして気をつけることはサイズの合わない工具は使わないこと。

最悪の場合、空回ってしまいネジ山が潰れる。そうなると修理は困難になる。

新品との交換も検討しなければならないので注意が必要。

ネックの状態や指板ラディアスなど、様々な要因を含む弦高問題。

「正解」とまでは言えませんが、ひとつの基準として覚えていただけましたら幸いです。

・弦の芯線を考慮し、ピックアップのポールピースに合わせた弦高調整。

・弦移動がやりやすいよう、弦の最頂点を基準にした弦高調整。

・弦の振動幅に合わせた、音質重視の弦高調整。

など、それぞれの“理想”があり、突き詰めると沼にはまってしまうのが“弦高調整”。

しかしご安心を。ここまで読んでしまったあなたはもう弦高オタクになる素質があります。

良きオタクであれ。なんだこの締め方は。

おわり。

【リペア】3択から選ぶナット交換【楽器製作所RMI】

どうも、るいなです。

早速ですが、タイトルの“3択”とは何のことか。

【金属・骨・樹脂】です。ほとんどのナットがこの3種類の中から選ばれ、あなたの手元の楽器に取り付けられています。

元となる角材(牛の骨)

「待って待って、“ナット”がそもそもわからないんだけど…」

ご安心を。

今回の記事では今更聞きにくい“ナット”の役割や素材。また、ナット交換のタイミングについてお話しします。

“ナット”とは?

黒水牛の角から削り出されたナット

ナットというのはこんな形のヘッドと指板の境目に配置されている弦を支えるパーツです。一般的には 『牛骨』『オイル漬け牛骨』などで作られています。また、弦との摩擦で削れていくため、消耗品です。

黒水牛の角製ナット
[楽器 : RMI #07 – Cthulhu]

わかりやすい交換時期の基準としては、開放弦を鳴らしてジリジリと違和感のある音が出る場合です。

この状態に心当たりがありましたらお近くの楽器屋さんにて、一度チェックしてもらうと安心ですね。

自分でも交換できる?

基本的にはリペアマンに任せましょう。自分で挑戦してみたい方は次のことに気をつけて下さい。

力任せに外すと指板が割れてしまうこともあります。元々のナットを外す際は、ヘッド側からブリッジ側に向け、“当て木”をナットに当て、当て木の方を“木槌”で軽く突くように当てて取り外しましょう。

[楽器 : フェンダー製ジャズベース]

写真のようにボンドの跡が残ってしまうこともあります。見えなくなる場所ですが大切なパーツです。小刀を使い、綺麗に除去してから新しいナットを取り付けます。

交換後
[楽器 : フェンダー製ジャズベース]

【Amazon】フェンダータイプギター用弦溝加工済み牛骨ナット

リンク先のように市販にて整形された商品も売っていますが、サイズ調整が必要な場合が多いです。ご自身で交換をする場合は微調整することを前提にお考え下さい。DIYとして挑戦しても楽しいと思います。

“ナット”の大切さ

音にも演奏のしやすさにも影響する“ナット”。

こんなに小さなパーツでも、完成度により性能が大きく左右されます。その為、リペアマンの個性や技術が試されます。大切な楽器を預けるにふさわしいかどうかは“ナット”から判断しても良いかもしれません。

黒水牛の角製ナット
[楽器 : RMI #12 – Cocytus]

『まとめ』

1番大切なことは使用するご自身の好みに合わせたナットを付けること。【金属・骨・樹脂】どれも個性があり、好みも人それぞれ。ナット交換の際は信頼のできるショップに相談しましょう。

ブラス製ナット
[楽器 : RMI #11 – Cthulhu]

【おまけ】

“楽器製作所RMI”では『黒水牛の角』が人気です。

元となる角材(黒水牛の角)

王道の牛骨や樹脂の他にも『アルミ』『ステンレス』『チタン』『アクリル』『PEEK』『カーボン』『自家製オイル漬け牛骨』など、様々な素材を取り扱っております。

“スキャロップドナット”と呼ばれる、肉抜きをした特殊な形状のナットも製作可能です。

スキャロップドナット※オプション
(RMI #06 – Cetus miniへ搭載済み)

楽器製作所RMIは、あなたのためにナットをつくります。

お問い合わせ欄より、気軽にご相談ください。

象牙製のナット
[楽器 : RMI #02 – Cetus]

[ナットの制作と交換 : ¥9,790 ~(税込)]

おわり。

どこのオタクギター?『Zero Thrash Guitars』をリペアする。

こんにちは、るいなです。

今回はなんとも面白い楽器を調整させていただきましたので報告です。

こちら“Zero Thrash Guitars ”の7弦ギター。

どこの国からやってきたんだよ、と思いTwitterで聞いてみたらなんと国産とのこと。すぐリプライで教えてくれるのなに。愛?

それにしてもTwitterの方々、なんでも知ってる。個人情報の保護なんてあったもんじゃない。

何はともあれ全体調整。オクターブやフレット磨きを進める。

弦を張ったら完成。と思ったのだが、ボディとネックの中心がズレていたり、フレットの高さが均一ではない事に気がついた。

早速オーナー様に連絡。

結果、全て直してくれ。とのことでセンターズレの修正とフレットすり合わせもすることになった。お任せあれ。

最初に“センターズレ”を修正する。

今回のセンターズレはネックとボディの接合部に隙間があり、ネジの固定が甘くなっていた為に左右に傾いたのだと思われる。

ちなみにセンターズレと言っても色々なパターンがあるのでリペアの際は原因の見極めが大切。

この個体はネックジョイント部の穴にインサートナットが入っており、それ自体が傾いていたので矯正。

写真の通り、空いた隙間は埋まらないが、自然な位置に弦が通るようになった。

いわゆる“弦落ち”の原因の一つでもあるセンターズレ。違和感を感じたら信頼のできるショップに相談すべし。もちろん当工房でも大歓迎。

続いてフレットすり合わせ。

すり合わせの方法はこちらにめちゃ細かく書いてあるから読んでみてね。

ほいできた。ぴかぴかだね!

仕上げは『ねこだまり工房』さんの蜜蝋ワックス。これを指板にぬりぬり。サクッと拭きとる。

なんかセールで安くなってたからリンク載せておくよ!

【Amazon】ねこだまり工房 精油入り 自家製クリア蜜蝋ワックス

そしてリペア中、何度も目を奪われたこの杢目。

“ケヤキ”や“タモ”に似ていると感じた。力強さと繊細さを兼ね備えた美しさ満点のトップ材。

そしてペグやピックアップカバーは純正ではなく、あとで加工して取り付けられたものらしい。かなりセンスのいいカスタム。見習いたい。

バックはアルダーかなあ。無難だけどアルダーってめっちゃいいよね。反りが少ないし加工しやすい。そして見た目も落ち着いててね、もうね、大好き。

ネックの形状は完全な台形。弦は27インチスケールにて張られ、いわゆる“バリトンギター”となっている。チューニングどんだけ下げるのよ。

そんな個性の塊“ゼロスラッシュギター”さん、現在はもう生産していないらしい。つまり大変希少。

2012年くらいに話題になったメーカーらしく、こちらは『#5』とのこと。5作品目ってことかな。

それにしても10年前からこんなオモシロギターが国内にて製造されていたのか、と思うと驚くばかり。僕がギターに触れる前から作られていたってことだもんね。すごいなあ。

これからの“オタクギター”はどうなっていくんだ、なんて考えさせられる作品でした。

みなさんはこれからの楽器業界、どうなると予想しますか?

それではまた。

※ブログへの掲載許可は頂戴しております。また情報提供ありがとうございます。今後ともどうかご贔屓に。

おわり。

前回の記事はこちら

【第二章】滋賀県のギター工房にて“ボグオーク”を削る【楽器製作所RMI】

『楽器×自動車』“クルマ”に魅せられたエレキギターを徹底解説『#13 – Cetus』【楽器製作所RMI】

お久しぶりです。

はじめましての方はようこそお越しくださいました。

るいな、と申します。

“楽器製作所RMI”にて、ギターやベースをつくったり修理したりしている者です。

実は以前使っていたブログのページで画像の枚数制限になってしまいまして…今回はのびのび語れるホームページを設けた次第です。

さて、本題は新作の徹底解説。

コンセプトはご覧の通り”クルマ”。

グレーをシンボルカラーとするイタリアの自動車メーカー『ABARTH(アバルト)』より多大なる影響を受け、製作を開始した。

ちなみにカラーネームは敬意を込めて【アバルトグリジオ】とする。

実のところ、このクルマは私が購入した初めてのMy car。1年ほど乗り回しているが全く飽きない。運転が楽しみで起床するほどである。

乗り心地だけでなく、ブランドの歴史的な背景を含め大好きになってしまった。車に関心を持たせてくれたきっかけ。このように語り出すと止まらないので続きは別枠にしよう。

要するに…

工業製品・芸術作品、両方を堪能出来るサイコーギターが完成したよ!ということ。

驚くべきはその重量。なんと2.5kg。

ヘッドレスギターと変わらない軽さを実現。偶然。

ちなみに、フェンダーのストラトキャスターなどは3.2kg~4kg。実際に持ってみると圧倒的に軽いことがわかる。

ソリッド(中空構造ではない)ギターでは異例の軽さではないだろうか。

軽いことで得られるメリットとして、まず手に取りたくなる。次に長時間の演奏でも身体への負担が少ない。最後に振り回して遊べる。道端の木の棒を拾って下校した人はわかると思う。

“軽さ”に貢献するのは様々な要因があるが、今回はご覧の通り背面の削り落とした部分が大きく影響している。過去作と比較してもトップレベルの減量に成功。ライザップか?

ボディの材質は3メートルの板から削り出した最高にエキサイティングなアルダー。継ぎ目のないワンピースピース材にて使用した。

2tトラックで届いた時、保管出来ないのに何で買っちゃったかなぁ、って思った。なんで買ったのほんとに

でも見て、ほら。このボディ中心部。

ここにネックをジョイントして下さい!と言わんばかりの木目。強度的にもルックス的な観点からも最良。ベストな選択だった。

ネックはメイプル。

至って普通の木。そのへんで売ってる。

でもかっこいいでしょ?実物見たらただのメイプルでも宝石のように見えると思う。絶対欲しくなっちゃう。そのくらい気合入れて加工した。

気になるネックの形状は左右非対称。いつも通り6弦側が薄く、1弦側が厚い。

実際、市販のギターより厚めだがこの特殊なシェイプの恩恵もあり普通に握りることができる。

内部には2本のカーボンと1本のトラスロッド。

中心のトラスロッドは調整箇所がトンネルのように通してある。これ自体に目立つメリットは無いが見た目が美しいので試してみた。

カーボンロッドも隙間なく詰め込んである。見えなくなるところではあるが美学を感じる箇所のひとつ。

指板はエボニー。黒いしな。

サイドインレイは”クソデカ”サイズ。しかも光る。緑色に光る。

やっぱりサイドインレイは大きければ大きいほど見やすいんよなあ…

何事にも「なんかいいな」って思うあの感覚あるじゃん?それを大切にした結果がこれ。

フレットは細く背の高いステンレス。

「ハイフレットのスウィープやりやすっ!」

とのご意見いただきました。ありがとうございます。まさか!これがお客様の声ってやつか!!

という事で、弾き心地の要因としてフレット自体の太さはとても重要だと思う。

ストラップピンはジムダンロップ製の埋め込み式。

楽器のシルエットを崩さずに搭載できる最高なアイテム。

そして気になるこの茶色いライン。

これはウォルナット。

しかし別角度から見てほしい。

こちらは白いライン。

材質はアッシュ。

そう。今回はトップ材に2種類のマテリアルを使用している。低音弦側にウォルナット、高音弦側にアッシュ。

それをセンターで張り合わせてある。

全てはこの質感を楽しむ為。

至近距離で見るとこのように、木目の凹凸が浮き出てくる。

ウォルナットとアッシュ、左右でそれぞれ違った質感を体感できるのだ。

これは触れなければ味わえない。

カッタウェイは大胆に削った。

裏面は常に手を添えて居たくなる柔らかい造形。

表面は逆に”工業製品”を感じさせるブラックの艶消しピックガード、そしてシルバーの六角ビス。

もちろんピックガード自体の固定もボディ側にインサートナットを入れて締結している。この金色の歯車みたいなやつね。

ご覧の通り表と裏で目指しているベクトルが全く違う。そう、ギャップ萌えってこと。

ちなみに、ピックアップの取り付けネジ部分にもインサートナットを組み込んでいる。高価なものに加工するのは気が引けたが「構わん続けろ」の精神が大切。なんのアニメのセリフだっけこれ…エヴァだっけ…

正面から見れば工業製品。

背面から見れば生物。

側面と背面の境も無段階。

このように見る角度により様々な表情を浮かべる為、見ていて飽きない。常に新しい大好きポイントが現れる。

ヘッドはご覧の通りいつもの。

この形状は今まで見た楽器の中でも最も好き。

円柱のつまみが非常に似合う。

シルバー&ブラックという混合は初めての組み合わせだが、どこか”腕時計”のような清潔なおしゃれを感じる。

スーツ姿でも弾ける、ビジネスマンにも似合う楽器でありたい。

ペグ本体もインサートナットに六角ビス締結。これをしないと気が済まない。

ヘッド裏の茶色いアルダー材は模様が出ててカッコよかったから貼り付けておいた。勝手にエキゾチックアルダーと呼んでいる。

勝手に”アグレッシヴアルダー”って呼びたい気持ちはある。

形状はどの角度から見ても楽しめる。製作者本人ですら見るたびに発見がある。

1番の見どころはこれ。

わかるかなぁ。

グレーのプレートが貼ってあるように見えるの。

実際はネック材を削って造形しているだけなのだが…

「変なプレート貼ってるし草」と勘違いしてくれたのなら冥利に尽きる。

側面までグレーのプレートラインは続く。

まるでコンクリートの板が存在するかのような振る舞い。

削って塗っただけなのにプレート貼ったように見えるの最高。

「あれ、実際にプレートを貼った方が楽だったな」と気がついたのは完成してからのこと。時すでに遅し。

ちなみに塗装前はこんな感じ。

ね、結構キレイに削り出せてるでしょ?

これはいわゆる”スキャロップドナット”というやつだろうな。素材は黒水牛のツノ。”黒雲母”という石に似た材質で、積層構造の紙のようにペリペリと剥がれる。

その為、こうした複雑な造形には向かない。

だからこそ加工してやりたくなる。人のやりたがらない事こそ、やってみると面白い。

構造としては弦同士の間が抉られ、その底面が指板の高さと一致している。これがしたかった。指板が弦を支えてるみたいでかわいい。とても健気。

個人的にはこれがナットの理想型のひとつ。

“弦を支持する”

この役割のみに徹するべき。

ブリッジは弦ゲージ09-46に合わせて”弦間ピッチ”を統一している。

要するに、太い弦も細い弦も同じ間隔を置いて配置されている、ということだ。

弦たちもソーシャルディスタンスを守ってるって事だね。えらいえらい。

最後にこの理解出来ない形状を自慢して終わろうと思う。

「無駄に洗練された無駄のない無駄な形状」

とのコメントいただきました。最高の褒め言葉です、ありがとうございます。

演奏者本人のモチベーションが上がる事が最優先。

予算を気にせず好き放題つくることができた。

とにかくお気に入りの作品。

この感動を是非とも体感してほしい。

見て、触って、聴いて、交流して楽しめる。

今回も好き放題語らせていただきましたが、ここまで辿り着けた方とは絶対に仲良くなれます。なりたいです。

本当に長いことお付き合いありがとうございます。

どうか今後ともよろしくお願いします。

【謝辞】

962wood works

裏フタへのロゴ刻印をお願いしました。

何度もめんどくさいオーダーに親身に応えてくれる大尊敬先輩。ギターのつくり方から刃物の手入れの仕方までお世話になっています。

真冬にも関わらず工房に泊まりに来てくれた際、上着を貸してくれて助かりました。早朝はコンビニまで散歩したり、一緒にいると全てが楽しいです。

そして製作されている楽器も飛び抜けたセンスのデザイン。真似したくても到底出来ません。今後も繁栄を願っています。

次回も宜しくお願いします。

【Spec】

Model : Cetus

string: 6

Scale: 25.5

1Vo. 6way switch

Body : Alder

Neck : Maple

Carbon Rod ×2

Inlay

Luminlay Green dot inlay

Head

Top plate: Ebony

Fret : Stainless

Nut : Black buffalo horn(Scalloped)

Fingerboard : Ebony

Hardware color : Black & Silver

Bridge : ABM

Tuners : Hipshot

Pickup : Tom Anderson

Neck : SA1R

Middle : SA1

Bridge : H2+