お久しぶりです。
はじめましての方、ようこそお越しくださいました。
“楽器製作所RMI”にて、ギターやベースをつくったり修理したりしている、るいなと申します。

実は以前使っていたブログサイトにて、添付できる画像の枚数を制限する機能が追加されてしまいまして…
いい機会なので、のびのび語れるホームページを作ってみた次第です。
さて、本題は新作の徹底解説。
いってらっしゃいませ。

コンセプトはイタリアの自動車ブランド『Abarth(アバルト)』
イメージはご覧の通り”クルマ”。
グレーをシンボルカラーとするイタリアの自動車メーカー『ABARTH(アバルト)』より多大なる影響を受け、製作を開始した。
ちなみにこのギターのカラーは、敬意を込めて“アバルト・グリジオ”という名前にした。
この画像のクルマは僕が購入したはじめてのMy car。
1年ほど、毎日乗り回しているが全く飽きない。運転が楽しみで起床するほどである。
乗り心地だけでなく、ブランドの歴史的な背景を含め大好きになってしまった。車に関心を持たせてくれたきっかけでもある。このように語り出すと止まらないので続きは別枠にしよう。
要するに…
工業製品・芸術作品、両方を堪能できるサイコーなギターが完成したよ!ということ。

壮大なる自慢話になるけれど、覚悟はよろしいか。
2.5㎏の超軽量化に成功
驚くべきはその重量。なんと2.5kg。
ヘッドレスギターと変わらない軽さを実現。偶然。
ヘッドレスギターとは。
ペグ(弦巻き)部分の構造がボディ側に搭載されていることが多く、ヘッド部分の構造を持たないギターのタイプを指します。
ちなみに、一般的にエレキギターとして最も有名なフェンダー社のストラトキャスターは3.2kg~4kg。
1kg程度の差ではあるが、その違いはギターを弾いたことがある方なら大きな差に感じるはず。
実際に持って比較してみると、圧倒的に軽い。

エレキギターとしては今までに例のない軽さ。
軽いことで得られるメリットとして、まず手に取りたくなる。
次に長時間の演奏でも身体への負担が少ない。
そして軽いので振り回して遊べる。道端の木の棒を拾って下校していた人にはわかると思う。

“軽さ”に貢献するのは様々な要因があるが、今回はご覧の通り背面の削り落とした部分が大きく影響している。
過去に製作したギターと比較しても、トップレベルの減量に成功。
製造の過程
ボディの材質は3メートルの板から削り出した最高にエキサイティングなアルダー。継ぎ目のない、いわゆるワンピース(一枚板)にてボディに使用した。

2tトラックで届いた時は保管出来ないのに何で買っちゃったかなぁ、って思った。なんでこんな大きいの買ったのほんとに。

でも見て、ほら。このボディ中心部。
ここにネックをジョイントして下さい!と言わんばかりの木目。強度的にもルックス的な観点からも最良。ベストな選択だった。

左手側に触れるネック部分には、メイプル材を使用。
至って普通の木。大型のホームセンターなら売っている。
でもかっこいいでしょ!実物を見れば、ただのメイプルでも宝石のように映る。そのくらい気合入れて加工した。

気になるネックの形状は左右非対称。いつも通り6弦側が薄く、1弦側が厚い。

実際、一般的なエレキギターより厚めの設計だが、この思想強めな形状の恩恵もあり、友人たちからは握りやすいと好評だった。

ネックの内部には、2本のカーボンと1本のトラスロッド。
トラスロッドはネックの反りを調整するための、金属の棒。
カーボンはトラスロッドの反りを矯正する力に対して、素直にネックへの反応が出るように仕込んでいる。
中心のトラスロッドは調整箇所がトンネルのように通してある。これ自体に目立つメリットは無いが見た目が美しいので試してみた。
カーボンロッドも隙間なく詰め込んである。見えなくなるところではあるが美学を感じる箇所のひとつ。

指板はエボニー。黒いしな。
サイドインレイは”デカ”サイズ。しかも光る。緑色に光る。
やっぱりサイドインレイは大きければ大きいほど見やすい。

フレットは細く背の高いステンレス。
通常のニッケル成分が多いフレットと比較して、ステンレスフレットは耐摩耗性に優れている。
M君「ハイフレットのスウィープやりやすっ!」

とのご意見いただきました。ありがとうございます。まさか!これがお客様の声ってやつ!!
という事で、フレット自体の素材や太さなどの形状は、弾き心地を左右する重要なポイントであることが客観的にも判明。

ストラップピンはジムダンロップ製の埋め込み式。
楽器のシルエットを崩さずに搭載できる最高なアイテム。

そして気になるこの茶色いライン。
これはウォルナット。
しかし別角度から見てほしい。

こちらは白いライン。
材質はアッシュ。
そう。今回はトップ材に2種類のマテリアルを使用している。低音弦側にウォルナット、高音弦側にアッシュ。
それら二種類の木材を中心で張り合わせてある。

全てはこの質感を楽しむ為。
しつこいようだが、画像を改めてよく見てほしい。
至近距離で見るとこのように、木目の凹凸が浮き出てくる。
ウォルナットとアッシュ、左右でそれぞれ違った質感を体感できるのだ。
これは触れることを許された者のみが楽しめる、特別な権利。

カッタウェイは大胆に削った。
裏面は常に手を添えて居たくなる、大きなカーブを使った柔らかい造形。
表面は逆に”工業製品“を感じさせる鋭利なカット。ブラックの艶消しピックガード、そしてシルバーの六角ビスで締結されている姿も加わり、機械のような印象が楽しめる。
無機質と有機質のコントラスト、どこを切り取っても美しい。

ピックガード自体の固定も、ボディ側にインサートナットを入れて締結している。この金色の歯車みたいなやつね。
ひとつの楽器にも関わらず、ご覧の通り表と裏で目指している方向が正反対で極まっている。
これが僕の考えるエレキギターの終着点。
そう、ギャップ萌えってこと。

ちなみに、ピックアップの取り付けネジ部分にもインサートナットを組み込んでいる。しつこい。
ピックアップ本体というそもそもが高価な部品。加工するのは気が引けたが「構わん続けろ」の精神が大切。なんのアニメのセリフだっけこれ…エヴァだっけ…?

この角度。あまりにも美しい。
正面から見れば工業製品。

背面から見れば生物。

側面と背面の境も無段階。
移り変わる面を目で追うだけで楽しい。
このように見る角度により様々な表情を浮かべる為、飽きることはない。常に新しい大好きポイントが現れる。

ヘッドはご覧の通りいつもの“Ruina Miyashiro”デザイン。
この形状は今まで見た楽器の中でも最も好き。

ペグ(弦巻き)に円柱のつまみが非常に似合う。
シルバー&ブラックという混合は初めての組み合わせ。”腕時計“のような清潔感のあり、大人のおしゃれを感じる。
スーツ姿で弾ける、ビジネスマンに似合う楽器に仕上がった。

ペグ本体もインサートナットに六角ビス締結。これをしないと気が済まない。
ヘッド裏の茶色いアルダー材は模様が出ててカッコよかったから貼り付けた。勝手にエキゾチックアルダーと呼んでいる。
“アグレッシヴアルダー”って呼びたい気持ちはある。
このヘッドの形状も、どの角度から見ても楽しめる。製作者本人ですら見るたびに美しいと感動し、新たな発見がある。

この個体、1番の見どころはこれ。
わかるかなぁ。
グレーのプレートが貼ってあるように見えるの。

実際はネック材を削って造形しているだけなのだが…
「変なプレート貼ってるし」と勘違いしてくれたのなら冥利に尽きる。
削り出した造形にも関わらず、別素材を感じさせることに成功したのだから。
彫刻家ってこういう気分なんだなあ。

そじて側面にまで、グレーのプレートは続く。
まるで金属やコンクリートの板が存在するかのような振る舞い。
削って塗っただけなのにプレート貼ったように見せたかった。
「あれ、実際にプレートを貼った方が楽だったな」と気がついたのは完成してからのこと。時すでに遅し。
ちなみに塗装前はこんな感じ。

ね、結構キレイに削り出せてるでしょ?

これはいわゆる”スキャロップドナット“というやつだろうな。
弦のない部分は削り落とされ、最小限の機能のみが残された形状。
素材は黒水牛のツノ。”黒雲母”という石に似た材質で、積層構造の紙のようにペリペリと剥がれる。
その為、こうした複雑な造形には向かない。
だからこそ加工してやりたくなる。人のやりたがらない事こそ、やってみると面白い。
構造としては弦同士の間が抉られ、その底面が指板の高さと一致している。
これがしたかった。
指板が弦を支えてるみたいでかわいい。とても健気。
個人的にはこれがナットの理想型のひとつ。
“弦を支持する“
この役割のみに徹するべき。

ブリッジは弦ゲージ09-46に合わせて”弦間ピッチ”を統一している。
要するに、太い弦も細い弦も同じ間隔を置いて配置されている、ということ。
弦たちもソーシャルディスタンスを守ってるって事だね。えらいえらい。

最後にこの理解出来ない形状をしつこく自慢して終わろうと思う。
「無駄に洗練された無駄のない無駄な形状」
とのコメントいただきました。最高の褒め言葉です、ありがとうございます。

演奏者本人のモチベーションが上がる事が最優先。
予算を気にせず好き放題つくることができた。
とにかくお気に入りの作品。
この感動を是非とも体感してほしい。
見て、触って、聴いて、交流して楽しめる。

今回も好き放題語らせていただきましたが、ここまで辿り着けた方とは絶対に仲良くなれます。なりたいです。
ここまで本当に長いことお付き合いくださり、ありがとうございます。
どうか今後ともよろしくお願いします。

今回の製作に協力してくれたギター工房の紹介
裏フタへのロゴ刻印をお願いしました。
何度もめんどくさいオーダーに親身に応えてくれる大尊敬先輩。ギターのつくり方から刃物の手入れの仕方までお世話になっています。
真冬にも関わらず工房に泊まりに来てくれた際、上着を貸してくれて助かりました。早朝はコンビニまで散歩したり、一緒にいると全てが楽しいです。
そして製作されている楽器も飛び抜けたセンスのデザイン。真似したくても到底できません。今後も繁栄を願っています。
次回もよろしくお願いします。

仕様書(スペックシート)
Model : Cetus(モデル:ケートス)
String : 6(弦:6本)
Scale : 25.5inch(弦長:25.5インチ)
1Volme. 6way switch(1ボリューム・6パターンピックアップセレクタースイッチ)
Body : Alder(ボディ:アルダー)
Neck : Maple(ネック:メイプル)
Carbon Rod ×2(カーボン補強ロッド2本)
Inlay : Luminlay Green dot inlay(インレイ:ルミンレイ※グリーンドット)
Head top plate : Ebony(ヘッド突板:エボニー)
Fret : Stainless(フレット:ステンレス)
Nut : Black buffalo horn(ナット:黒水牛の角)※Scalloped(スキャロップ仕様)
Fingerboard : Ebony(指板:エボニー)
Hardware color : Black & Silver(ハードウェアカラー:ブラック&シルバー)
Bridge : ABM(ブリッジ:エービーエム)
Tuners : Hipshot(ペグ:ヒップショット)
Pickup : Tom Anderson(ピックアップ:トムアンダーソン)
・Neck : SA1R
・Middle : SA1
・Bridge : H2+

2026年1月16日更新

超かっこいいっすね!!
このトップの塗装は何をどんな感じでやるとこうなるんですか?
差し支えなければ教えていただけると嬉しいです!
いつも応援しています!
Kagra様
閲覧ありがとうございます。
塗装の素材はウレタンです。
木目の凹凸を埋めず、そのまま色を塗っています。
簡単な説明ではありますが、参考になれば幸いです。
今後ともどうぞよろしくお願いいたします。
巫社 瑠衣奈
返信ありがとうございます!
参考にさせていただきます。