人懐っこいイヌみたいなエレキギター『#17 – Fenrir』【楽器製作所RMI】

どうも、るいなです。

夏、楽しんでますか?

僕はショッピングモールの駐車場に閉じ込められた友人の車を救出したり、花火大会に向かう浴衣姿を羨望の目で見つめて暑さを凌いでいます。ぜんぜん涼しくならん!

これは無事に救出できた時の祝杯の様子。この場では話せないことが盛りだくさんだったね!

さて、公開していいのかわからない前置きはここまで。

今回は新しくつくった楽器の紹介をする。

とりあえず全体を見せてくれって話だよな、わかってる。はいどうぞ。

楽器の名前は『#17 – Fenrir』。

“なんばーじゅうなな。ふぇんりる”と読む。

言いたいことは色々あると思うけど、順番に説明していくので待ってほしい。

ボディの形状について

“フェンリル”という名前はこのボディの形のこと。

厨二病の治らない僕のネーミングセンスは笑って許してほしい。

北欧神話のオオカミを指す“フェンリル”。

要するにイヌ。

つまり人懐っこい。

なのでボディの形も丸みを帯びていて、

“Cetus(ケートス)”“Cocytus(コキュートス)”

のような癖がない。とにかく人にやさしい、人懐っこいモデル。

“Cetus”と“Cocytus”は個性が強すぎるんだよな。でもそんなところが大好き。

話がそれた。今回はフェンリルのお話。

ボディについて

トップ材(表層)

表面を飾るのは“バックアイバール”という木材。

そう、木材だから驚き。

「これは石です。」

って言われても納得する。何度も言うけど、これは木材。

もちろん色も塗っていない。

削ってみると、石とか金属が混入していたので本当におもしろい木材。

お高い刃が一瞬で使えなくなったので、製作中はおもしろいとか言っている場合ではなかった。メンタルが大騒ぎだった。

まあでも、こんな変わった柄も出現したりと魅力は尽きない木材のひとつ。

大自然の神秘を具現化した存在だと思っている。

ちなみに、これが加工前のバックアイバールさん。

ミドル材(中間層)

この“ミドル材”が存在する楽器は市販品ではあまり見かけない。

この赤色で縁取りをしている木材。

その名も“ブビンガ”。

正直、このままトップ材として使用しても問題がないほど美しい。

実はアコースティックギター用にカットされた材を使っている。あまりにも贅沢。

めちゃ硬いので、ルックス的に印象を引き締めるだけでなく、楽器の構造的にも重要な役割を果たす。ブリッジを固定するネジを締める際などに実感する。

バック材(主材)

楽器のメインとなる木材は“アルダー”。

継ぎ目のない、一枚板。いわゆる1ピース材。

左右対称になるように木材を切り出した。これ以上ないアルダーだと思っている。

冒頭でも説明した通り、フェルリルは人懐っこい。

バックカットは、外周の面取りとするように造形。

いつの間にか、“線”が“面”になっている。このような造形に僕は美しさを感じる。

ここは“プッカ”。

え、『Pucca(プッカ)チョコレート』ってお菓子しらない?

知らない人は今すぐ調べて。そっくりだから。

下部のツノは細い。

やはり“プッカ”を意識している。

だから、プッカを早く調べて。そして比べてみて。

シールドケーブルが入りやすいようにカット。

機能を優先した造形となっており、先ほどの“プッカ”とは対象にカクカクとしている。

裏蓋もアルダー材を使用した。

このひょっとこみたいな形どうにかならん?かわいいね。

六角のビスで締結しており、ライブでの使用にも耐えて欲しいなという期待を込めている。

蓋には『#17 – Fenrir』と書いてある。

[工業製品 ✕ ハンドメイド] というギャップ萌えを狙っている。

ネックについて

指板材

これ、木材ですって。びっくりでしょ。

白と紫を兼ね備えた“パープルハート”という木材を使用した。

一枚の板で構成されており、着色もしていない。

この色は天然なのだ。美しすぎる。

以前にも、同様の指板材を使って楽器をつくった。

ご覧の通り、この指板の白い部分はヘッドまで突き抜ける。

正直、かなりの時間をこの工程に使った。めちゃむず!って感じ。

フレット

7弦ギター

フレットはあんまり語ることないな。

個人的にベストなステンレスフレットを打ち込んだ。

細くて背の高い『JESCAR #55090』という型番。

背が高いフレットは“フレットすり合わせ”のできる回数が多いし、押弦したときの弦の位置と指板の距離が離れることで弾き心地が“ハーフスキャロップド指板”に近くなる。

ハーフスキャロップド指板とは。
フレットとフレットの間の指板面を凹み形状に削った指板のこと。
“スキャロップド指板”よりは控えめに凹みの削られたものを“ハーフスキャロップド”と呼ぶことが多い。

“ハーフスキャロップド指板”のメリットはチョーキングとかビブラートの際に指が指板に引っかかりにくいこと。

要するに、ベンド奏法がやりやすい。

“ハーフスキャロップド指板”で有名なのは、あの世界的メタルバンド『BABYMETAL』のギタリスト、大村おおむら孝佳たかよしさん。

学生時代の憧れだあ。

ただ、大村さんの愛用するギターのように指板を削ってしまうと後戻りはできなくなる。

つまり、“その後の選択が減る”。

これが“スキャロップド指板”のひとつのデメリットだと考える。

※選択肢が減るのは客観的な事実。“スキャロップド指板”しか勝たん、という考え方はむしろ大好き。安心してほしい。

他にもスキャロップ加工したあとのネックの強度問題とか、何フレットまでスキャロップするのかなど、論点はいくらでもある。

ぁ〜、これ以上語るとほんとに来週になっちゃう。控えねば…

あと!スキャロップド指板にすると押弦の力加減に注意しないといけないとか!!!おい、これ以上しゃべるな。

ギターパープルハート

これはフレットの話題が1番盛り上がる可能性あるな。

というわけで、僕は後に引けない“スキャロップド指板”ではなく、加工の余地を残すために背の高いフレットを打つという選択をした。

背の高いフレットは押弦の際に弦と指板の距離を離すという条件を満たすという点では、“スキャロップド指板”と同様の恩恵を受けることができる。

この選択は、他のフレットにも打ち替えることができるという選択を残しているのでお好みであとから加工が可能。

つまり“スキャロップド指板”のメリットを感じながらも、他の選択も取ることが出来るという、“選択肢を残す選択”を選択。

やばい、話がややこしい。

この話を理解できる人、知ってる限りで4人しか居ないけど大丈夫かよ…

7弦ファンドフレットマルチスケールギターフレット

解説の難易度を戻す。

フレットサイドは最低限の面取りしかしていない。

理由は弦落ち対策とか、丸くしたい場合は後から加工できるからとか、あとは写真映えするからである。

なにより削ってしまっては後から加工する範囲が減る。足すことのできない金属であるフレットでは、それはデメリット。

要するに、丸めてしまっては後から角張った造形に戻すことはできないというわけ。

先ほどのフレット高さの話と同じ、“選択を残すという選択”を選択。

だから話をややこしくするな!!!

でもさ、世の中には選択肢を減らすっていう選択もあるよね。例えば“Apple社”のラインナップとか。

“Android”よりも選択肢が限られているおかげで悩む要素が減って、即決までのスピードが速い気がするもん。

迷うなら両方買うっていう選択もアリだよね。

まって何の話?

インレイ

インレイは大きければ大きいほどいい!以上!

 

 

 

 

 

 

そういうわけにもいかないな。説明しよ。

これは“ルミンレイ”。

光を蓄えて放出する、眼に優しい光を放つ電池要らずの蓄光インレイ。

中国製のお手頃なやつもあるけど、あれは不安要素が多い。

なので妥協せず、”ルミンレイ”を打ち込んだ。

あと、この黒い縁取りがヘビの目玉みたいでかわいい。

紫の指板に黒縁の組み合わせ。完全に毒へビの配色。

表面にインレイはない。

理由はサイドのインレイがこれだけ大きければ、指板の表に目印は必要ないと考えているから。

せっかくのパープルハート指板に穴を開けるのも申し訳ないし。

ネック材

メイプル。

シンプル。

木材に含まれる水分量が管理された、人工乾燥材とかいうマテリアル。

仕入れ先の話だしよくわからないけど、結果として状態が安定しているのでこれを使った。

ネックの接合部みて。

もうこんなん完全に“プッカ”でしょ。

お菓子みたいな色がたまらんかわいい。

ヘッドについて

はい。いつもの形状です。

このヘッド大好きすぎる。自画自賛でごめん。

先端の割れた部分。下のパープルハート材が覗き、荒廃した雰囲気を纏う。

パープルハートも茹でた。

これは過去1番の難易度だった。しかし思いついたならやるしかない。

その上には放射状の“バックアイバール”を貼り付けた。

おかげで廃墟のようなヘッドとなった。

あまりにも至高。

#03 – Fafnir

実は以前にも“割れたヘッドトップ材を使い、下の木材を見せる”のはつくったことある。

“Ruina Miyashiro”の原点に回帰するスペック。

ナット

大人気だった透明なナット。

素材はアクリル。

指板とヘッドの突き板であるパープルハートのラインを崩さないために採用した。

ナットがクリアであることにより、紫と白のラインが途切れず透過して見える。

水晶や氷砂糖、ガラスのようにも見える清涼感のある“夏らしいナット”に仕上がった。

ナットに清涼感は求められていないだろ。“夏らしいナット”ってなに。

ボリュート

“ボリュート”というのはヘッド裏とネックの境目にある段差のこと。

強度確保の役割をさせられている“ボリュート”さんだが、こんなに主張させる必要はない。

ただ、僕は無類のボリュート好き。

主張の強いボリュートは、握った際に手のひらとの設置面積が大きくなる。つまり安心感がある。

「目まぐるしく不安定な世の中。このボリュートを握り、小さな安心を届けたい。そんな想いを込めてつくりました。」

ふざけすぎ。怒られろ。

みて“Ruina Miyashiro”って書いてある。

手作り感と工業製品感の融合、好きかも。

ハードウェアについて

ピックアップ

ブリッジ側:ナズグル

ネック側:センティエント

どちらもセイモアダンカンのピックアップ。

これに木材のカバーを付けている。

ピックアップカバーを取り付ける理由はもちろん、指板と統一するため。

するとどうだろう。

ヘッド。指板。ピックアップ。全てのパーツを使い、楽器の中心に軸が生まれた。

頑張って難しいこと言ってるけど、単純に中心の色を揃えたかっただけ。

ちょっと見栄張った。

ブリッジ

『ABM』のシングルサドル。

ドイツからやってきた、単体でも眺めることができる美しい工業製品。

ゴールドのハードウェアは、派手な木材を更に強調させる。それにしてもこのカラーリングはド派手。

TPO(時と所と場合)を選ぶ楽器になった。なにその言い回し、おもろ。

パープルとゴールド。ワンピースの“ドンキホーテ・ドフラミンゴみたいな配色だよね。

ワンピース 1話から観たい。

ペグ

ペグはいつもの『HIPSHOT』。

アメリカからやってきたとのこと。

円安が凄すぎて泣きながら輸入した。

精度が1番良いわけではないが、デザインとカスタムの幅の広さの総合点で優勝している。

「採用。」

まとめ

スケールが25.5~26.5のファンドフレットである理由とか、HIPSHOTはノブも最高であるとか、ESP製のトグルスイッチは丈夫だとか、語りたいことが尽きない。

ただ、もうかなりの長文になっちゃったしやめておこ。

そもそもここまで読めた方が居ないかもしれない。

僕もこの文章読み返すの修行だと思うもんね。

ちなみに『#17 – Fenrir』のレギュラーチューニングは7弦から【G・D・A・D・G・B・E】。

おわり。

謝辞

962wood works

ピックアップのボビンカバー製作/指板のフレット溝掘削と外周切り出し。

え、もう何年のお付き合いになるんですか…5年くらい?

どんなときも変わらず接してくれて、助けられていました。僕が熱を出した時も対処策をリストにして送ってくれた。やさしい。

これからも“962wood works”の繁栄を願っています!

 

Yuza Fujita

フェンリル7弦ギター

写真撮影のために、慣れない髪のセットとアクセサリー付けてたのめっちゃ面白かった。

また一夜漬け作曲大会やろうぜ。

あと、VILDHJARTA(ヴィルドジャルタ)のバンドTシャツはマイナー過ぎる。誰もわからないでしょこれ。

友人T

ワインを作る単細胞の菌類を育てている彼。8弦ギターとクラシックギターでジャズをするのが上手。おまけに被写体もできるハイスペック日本男児。

セッションに向かう前を捕まえて撮影に付き合ってもらった。

東京に行ってしまうと聞いて寂しくなった。

てか、サングラス怖すぎ。

 

今村さん

いつもお世話になっているアコースティック楽器製作のプロ。

ベンディングアイロンを貸してくれたり、木材の曲げ方を教えてくれたりいっっっっっつもお世話になってる。

わりと頻繁に会うので、この場でお礼を言うのは恥ずかしかったりする。

今後ともどうぞよろしくお願いします。

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